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11話 サリシャス その2

 ギゼフ・ランバル侯爵視点……。


「まあ、まずは話し合おうじゃないか。シェイナ……いや、国内トップクラスの画家であるサリシャス」


「はっ? は、はあ……」



 呆れたように溜息を吐いているシェイナ……腹立たしいが、ここは奴を煽ててその気にさせる以外にない。まさかここまでの拒否反応をされるとは思っていなかったからな。


 まあ、たかが婚約破棄をした程度でここまでへそを曲げられるのもどうかと思うが、ここは仕方ないだろう。強制的に従わせるのは、この先を見据えた場合、あまり得策ではないように感じられた。最初は半強制的に描かせる予定だったんだがな……予定変更だ。



「サリシャス、私は貴方の絵に心底惚れているのだ。その気持ちは分かって欲しい」


「あの、ギゼフ様……?」


「サリシャスの風景画、人物画……ジャンルを問わない種類の多さは飽きさせることをしないな。一度に大量に注文されても受注できる程の速筆も素晴らしいと言えるだろう」


「え、ええ……ありがとうございます」



 よしよし、こうして煽てていけば、まずはシェイナの心を解きほぐすことが出来るだろう。褒め殺しというやつだ。


「ギゼフ様、少し彼女を褒めすぎではありませんの?」


「ロドリーは少し黙っていてくれ。私はシェイナ……サリシャスと話しているのだからな」


「む……はい、わかりました」



 口を尖らせているロドリーだが、今は気にしないでおくか。後で慰めてやれば良い。先ほどのロドリーからの言葉もシェイナは怒っているだろうからな……その部分も謝罪しておくか。


「ギゼフ様?」


「先程のロドリーが無礼を働いたことについても、申し訳なかった。謝罪させて欲しいサリシャス」


「あ、はい……まあ、構いませんけど」


 シェイナは曇った表情になっているな……それ程にロドリーの言葉は効いているということか? まあ、罵倒に次ぐ罵倒で責めても良かったのだが、謝罪と褒め殺しの方が確実だろう。



「あの、ギゼフ様? どういうつもりなのでしょうか?」


「どういうつもか、というのはどういうことかな? カール殿?」


「いえ、急に態度が変わったように見えましたから……どういうつもりなのかと思いまして」


「何を言っているのか分からないな。私はただ、サリシャスのファンとして彼女への非礼を詫びているだけだが?」


「そうですか……」



 カール殿はまだ怪しんでいるようだな。だが、シェイナを落としてしまえば、こちらの勝ちだ。私は再び彼女に視線を移した。


「ギゼフ様」


「な、なにかな? サリシャス?」



 抑揚のない呼びかけがシェイナから聞こえてきた。私は自然と反応する。


「私の絵はそれ程に素晴らしいでしょうか?」


「ああ、勿論だよ! 感動する程に素晴らしいと思う! 国内一の画家というのは間違いないだろう!」


「そんな……照れてしまいます」


「照れる必要はないぞ、サリシャス! それは事実なんだからな! お前の絵は本当に素晴らしい! 先ほどまでの私達の非礼は全て忘れてくれ!」


 よし! シェイナをその気にさせる為のラストスパートだ! ここで一気に攻勢を掛けてやるぞ!



「とても嬉しいことではありますが、先ほどまでの非礼を忘れることは決してありません。ギゼフ様にお売りすることはありませんが、それでも私の絵を褒めてくださいますか?」


「えっ……?」


 シェイナの表情は能面のようになっていた。私の言葉に感動している風には全く見えない……ば、馬鹿な。ここまで褒め殺しをしているのに、全く売る気がないだと……!? まさかの事態に私は焦ってしまった。


 ど、どうすれば良いのだ……?


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