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4、ガンジュの区切り

冒険者協会支部長室にて、支部長ガンジュは冒険者のソウと話していた。


室内には時折、笑い声が響き、和気藹々とした空気が流れている。

話しの内容は多岐にわたったが、主にガンジュとソウとの出会いであったり、ソウが、一年間の間に経験した冒険の内容をガンジュが質問したりして、ゆっくりと流れていった。


その話の中で、ガンジュは自然と昔に思いを馳せていた。


ガンジュが、ソウに出会ったのは、まだソウが幼子で、物心もついていない時だった。

当時、ガンジュは冒険者を引退したばかりで、知人から冒険者協会の支部長として働いてみないかという誘いを受け、支部長という職に就いたばかりだった。


慣れない職に戸惑いながら、仕事をする毎日。

そんなある日だった。冒険者時代、当時五人組で、パーティーを組んでいた内の一人『リオン』が一歳ぐらいの赤ん坊を連れてやってきた。


その赤ん坊がソウだった。


ガジュンは初め、リオンが子供の父親なのかと考え、祝福しようとしたが、様子がおかしいことに気がつく。


顔が似ていないのだ。いや、顔どころじゃなかった。人種が違う。うっすらと生えている髪の毛は黒く、目も黒い。


目も鼻も口も何一つ似ているところなんてなかった。


そこで、リオンにその赤ん坊をどうしたのか話しをきくと、なんと、空から落ちてきたのだと答えた。


ガジュンははじめ意味が分からなかったが、聞いていくうちに少しずつ理解することができた。

数ヵ月前、リオンがダンジョンから帰還し、家に戻る途中、空から魔力反応があったらしく、リオンは反射的に空を見上げたらしい。すると、子供が空から落ちてきて、リオンが救出したそうだ。


ただ、救出した赤ん坊は様子はどこか衰弱しており、どうやら魔力欠乏症になっているらしかった。

魔力欠乏症とは、体内にある魔力を使いすぎたために、衰弱してしまうことだ。


つまり、子供は知らず知らずのうちに自分の魔力を使っていたのだ。


リオンはすぐにこの子供は何らかの先天性技能『アビリティ』を持っているのではないかと疑った。


というのもこの頃、子供が無意識にアビリティを使ってしまい自分や周りの人を傷つけたりしてしまう事例が、数件報告されていたからだ。本来なら魔力とは決して無意識に使えるものではないのだが、ごく稀に魔力に対し親和性が高い子供がおり事故が起きてしまうという。当時まだ有効な対策は無く、とれる手段としては、そのような子供からは、できるだけ目を離さないようにとするぐらいしかなかった。


ただ、高ランク冒険者であるリオンには一つだけ、そういった状況を打開する可能性がある術を持っていた。


確証など無かったが、もし自分が拾った子供が自分の想像したアビリティであった場合、事故なんかでは済まない可能性があった為、やるしかなく、結果的として、その子供はそれ以来、アビリティを使うことはなかったという。


しかし、子供の両親は結局、どこを探しても見つかることは無く、情報としても黒髪黒目なことからアジア圏内の子供だろうということしかリオンには分からず、子供のアビリティを使えなくしておく為にも、リオンはその子供を引き取ることに決めたのだという。


「で、その子どものアビリティとは何なんだい?」


ガンジュはリオンにそう尋ねる。


「おそらく、子どもが、現れた時の情報から考えて空間転移だろう」

「……へぇ、それはまた強力なアビリティだね。」

「ああ。」

「だから、君が引き取ろうと思ったのかい?君は子供が、好きなタイプでもないだろうに、おかしいと思ったんだ。」


リオンはガンジュにそう言われると視線を己の腕の中にいる子どもに向けた。


子どもを見るリオンの表情はまるで、祈るようで悲しそうな、また、それ以外にも幾重にも思いが混じったような、今まで長い付き合いのあるガンジュでさえ、見たことが無いものだった。


「……可能性を感じたんだ。この小さな子に。この子は、俺たちが攻略出来なかったあのダンジョンをも攻略するようなそんな逸材になるかもしれない。」

「……お得意の勘ってやつかい?」

「ああ。」

「でも、この子の面倒を見れるのかい?君は世界でも五本の指には入るであろう高ランク冒険者だ。世界中から依頼がくる君が、こんな小さな子の面倒を見れるとは思えない。」


そうガンジュが言った瞬間、リオンはにやりと笑う。


「そこでだ。ガンジュ。俺はあの時の借りを今返してもらおうと思う。」

「まさか、その借りっていうのは?」

「お前の命を救った時の借りだよ。あの時お前はこう言った。この先俺が、どうしても困った時があれば、一つだけ手を貸すと。」  


まさか忘れたのか?と、リオンはガンジュに視線で問う。


「勿論覚えているよ……あの時ほど、もう駄目だと思った経験は無いからね。ただ、僕はどうすればいいんだい。君がいない時に面倒を見ればいいのかい?」

「ああ。話が早くて助かる。俺も最低限の依頼しか受けないつもりだ。おそらくそんなに家は空けない。」

「はあ……僕も忙しいんだよ。そんなに構ってはいられないから、職員にも協力してもらうよ。リオン、話はそれだけかい?」

「いや、あと一つお前に頼みがある。これは友人としての頼みだ。この子の両親を探して欲しい。依頼料は渡す。何年かかっても構わない。」


リオンは頭を深々と下げながら、ガンジュに「どうか頼む」と呟く。


ガンジュはそのリオンの行動を見て内心驚愕する。リオンが頭を下げ、誰かに頼みごとをするなど見たことがなかったからだ。


「……どうしてその子供にそこまでいれこむんだい?この子が、冒険者になりたいと成長して思ったら、君が、育てるつもりなんだろ?その上、両親を探して欲しいなんて、僕の知ってる君なら絶対にやらないし、言わないよ」


ガンジュはリオンにはっきりと告げる。


「言っただろ。俺はこの子に可能性を感じてるんだ。今から貸しを作っておく必要がある。」

「……ハアー。分かったよ。どうせこれ以上喋る気ないんだろ。探すよ。その子の親を。でも、本当に何年かかるか分からないよ?僕もその手のプロじゃないし。」

「感謝する。もし見つけたらこの子に言ってあげてくれ。それからの行動はこの子次第だ。」


リオンはそれだけ言うと、早足に子どもと共に去っていった。


こうした経緯があり、ガンジュとソウは出会ったのだ。


それから、ソウはすくすくと育っていった。

リオンに憧れ、自らも高ランク冒険者になりたくて、努力して、今ガンジュの目の前にいる。


ガンジュは眼の前のソウを見つめた。


(随分と強くなった。)


ガンジュは長年の経験から、ある程度の冒険者の力量を測ることができる。

その経験がいうのだ。眼の前の冒険者は強いと。


(リオンの見立ては正しかったってことなのかな。僕もようやくあの時の依頼を果たすことができる。)


リオンと約束した依頼。

十年以上の年月がかかってしまったが、ようやく見つけたのだ。


ソウの両親を。


ガンジュは眼の前のソウとの会話に、区切りをつけると、自らの依頼にも区切りをつける為、一つ呼吸をはさみ言う。「じゃあ、そろそろ大切な話をしようか」と。





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