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全てを義妹に奪われた令嬢は、精霊王の力を借りて復讐する  作者: 花宵
番外編(アズリエル視点)

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22/22

9、貴女の笑顔は私が守ります

「……だから私は、エルに尊敬してもらえるような心の綺麗な人間じゃないんです。幻滅、しましたか?」


不安そうにこちらを見つめてくるフィオに、私は慌てて首を横に振った。


「幻滅なんてとんでもない! とても辛い経験をされて、今まで頑張ってこられたのですね……っ」


そんな過酷な運命を変えるために、ここまで頑張っていたなんて。フィオの壮絶な過去の話を聞いて、私は無意識のうちに涙を流していたらしい。気がつけば、フィオにハンカチで涙を拭われていた。


「す、すみません! 辛かったのはフィオの方なのに、私がこんな……っ!」


過去の彼女の事を思うと、あまりにも不憫で悲しくて涙が止まらなかった。しかし今は情けない自分を止める事よりも先に、伝えないといけない事があった。


「フィオ、貴方は復讐をしたのではありません。大切な家族を守るために必死に頑張っただけです。ジルベール達が処分を受けたのは、自分達の悪しき行いが招いた結果なのです。だからどうかその事で、自分を卑下しないで下さい。貴方は間違った事など何もしていません! ジルベールの婚約者としての務めを果たすために、とても努力して来られていたのを私はよく知っています。貴方は強い意思で家族を守りきった、誰よりも優しいお方です。私の尊敬する女性なんです。それは今も昔も変わりありませんよ」


「エル……」


「ってすみません、こんな泣きながら言われたって、全然説得力も何もありませんよね!」


「いえ、エルの温かい気持ちが伝わってきて、何よりも説得力がありました。ありがとうございます。でも、私のせいで泣かせてしまってごめんなさい」


「いえいえ! 私こそ、こんな情けない姿を見せてしまって、すみません……っ!」


恥ずかしくて止まらない涙をこれ以上見られないように、思わず手で自分の顔を隠した。


「情けなくなんてないです。貴方が流してくれた涙が、私の辛かった過去を全て洗い流してくれたみたいで、今とても心の中が温かい気持ちでいっぱいなんです。本当にありがとうございます」


「少しでも、フィオの役に立てたのなら、本望です……っ!」


「エル、隠さなくていいのですよ。もっと近くで、貴方の綺麗な顔を見せてください」


「で、ですが……っ!」


「ダメ……ですか?」


「い、いえ、貴方が望むならば……」


正直恥ずかしい。けれど、フィオの望みは何でも叶えてあげたい。隠していた手を下ろすと、じっとこちらを見つめているフィオの姿が目に映る。


「ほら、やっぱり綺麗です。でも、エルのこんな可愛い顔は、他の誰にも見せたくありません。だから……」


フィオは私の頬に優しく手を添えると、こちらへ顔を近付けてくる。そして柔らかい何かが、涙を拭うように目元から頬へと少しずつ移動した。


「涙が止まるまで、私が隠してあげますね」


耳元で囁かれた甘い声に、鼓動が高鳴る。

重ねられた唇から伝わる柔らかな感触。それがフィオの唇だと気付いた途端、顔に一気に熱が集まるのを感じた。そのおかげか、あまりの熱さに蒸発してしまったかのように、涙はピタッと止まった。


「よかった、止まったみたいですね」


「は、はい……」


目の前には、嬉しそうに満面の笑みを浮かべる愛しいフィオの姿がある。そんな彼女と先程、初めての口付けを……意識すればするほど、高鳴る鼓動が止むことなくせわしく動き続けていた。


「エル、どうしてまた顔を隠すのですか?」


「そ、それは! きっと今、私の顔は茹でダコのように真っ赤だと思うので……!」


「いいじゃないですか、その可愛い顔をもっと見せて下さいよ。ダメ……ですか?」


瞳をうるうるさせてこちらを見上げるフィオを前に、可愛いのは貴方の方だと思えてならない。


(本当に、フィオには敵いませんね……ああ、心臓がいくつあっても足りる気がしない)


けれどこの胸の高鳴りも、胸がいっぱいになるような苦しさも、全てフィオが与えてくれるものだと思うと、愛おしく思えてならないのもまた事実で……みっともない姿でも、恥ずかしい姿でも、ありのままの私を望んでくれる事が嬉しくもあった。


「こんな顔でよければ、いくらでもご覧ください。その代わり……貴方の美しい瞳には、いつでも私だけを映してくれると、嬉しいです」


「も、もちろんです! 私がこうして触れたいと思うのは、エルだけですよ」


そう言ってフィオは、私の手をぎゅっと握りしめてくれた。それだけで、胸がいっぱいになる。


「お話聞いてくれてありがとうございました。信じてくれて、とても嬉しかったです」


思わずフィオを抱き締めたい衝動に駆られるも、必死に堪えて握りしめてくれた手を優しく握り返した。

欲望のまま無理やりフィオに触れてしまったら、辛い記憶を呼び起こして怖がらせてしまうかもしれない。それだけは絶対に嫌だった。


「こちらこそ、話しづらかった事を教えて下さりありがとうございます。フィオの事を知れて、私もとても嬉しかったです。辛い思いをした分、これから一緒に楽しい思い出を作って行きましょうね」


「はい! エルと一緒に行ってみたい所がたくさんあるんです!」


瞳を輝かせて、行きたい所を教えてくれるフィオが可愛くて仕方ない。


「愛しています、フィオ。こうして貴方の隣で過ごせる事が、本当に夢のように幸せです。教えてくれた場所はいつか必ず、全部一緒に行きましょうね」


私の言葉で途端に頬を赤く染めたフィオが、愛おしくて仕方ない。



その日から、私はローザンヌ帝国の旅行記にも目を通すようになった。フィオが喜んでくれそうな新婚旅行のプランを立てるために。


もう二度と、フィオの笑顔が曇ることがないように傍で支えていこう。そしていつか……彼女の抱える傷が本当の意味で癒えた時には、この手で触れて、抱き締めてもいいか聞いてみよう。


そのためにも、フィオが私を望んでくれるように、もっと努力せねばなりませんね!


愛しいフィオの笑顔を思い浮かべながら、私は再び旅行記に目を落としたのだった。

番外編までご覧いただきありがとうございました!


本編で出てこなかった裏側が、少しでも補完できていればと思います。


ブックマークや☆☆☆☆☆を押して応援して頂けると、次回作執筆の励みになります!

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