表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/441

帰り道のトラブル

 日が落ちる前には屋敷に戻りたいから、早めに帰路につく。

 ウサギはキョウカとシノブが交代で運ぶらしいが、馬上の揺れに小動物が耐えられるかどうかは不明だ。

 まあ、野生動物なんだし、嫌なら逃げ出すだろう。


 森の街道を行きと同じ様に順調に駆けていた俺たち一行だったが、どうやら帰りは上手くいかないらしい。


 見通しの悪い曲がりくねった街道で先は見通せないが、逐電亡匿のレーダーには複数のおかしな反応がある。

 中でも大きな異物の反応は多分、馬車だと思われる。

 それから馬車を囲む複数の生物。さらには森の中に潜んでいる気配まである。

 盗賊か、魔物か。


「キョウカ、シノブ! 馬を止めろ!」


 気持ちよく馬を駆けさせていた二人だったが、速度を緩めて素直に止まる。若干不満げな様子だが。


「なんなのよ?」

「少し先でトラブルだ。魔物か盗賊だと思うが、馬車が襲われているみたいだな」

「だ、大丈夫なんでしょうか?」


 耳を澄ませば木々の向こうからでも、微かな戦闘音が聞こえてくる。

 どこの誰だか知らないが、数の差は歴然だし、勇者並の力でもなければ絶体絶命のピンチだろう。


「どうする? 所詮は通りすがりだ。このままやり過ごしてもいいし、お前らが助けたいって言うのなら、それでも構わん。ただし、時間はないぞ。助けたいなら早く決めろ」


 意地の悪い質問かもしれない。平均的な日本人ならば、そう易々と人を見殺しにする選択はできないだろう。


 だが、こいつらは戦いが嫌で俺のところにやってきた経緯がある。

 知らん奴のために自分の身を挺して助ける選択はできないだろうし、そうすると俺が単独で助ける流れになる。


 勇者でありながら自分が直接手を出すのは嫌なのに、他人にはやらせるってことだ。俺もタダ働きは好きではないが、同居人の少女の願いを聞き届けるくらいの度量はあるつもりだ。もっとも、こいつらにそのエゴの塊みたいな決断が下せるだろうか。


 ちなみに俺が一人でこの状況に遭遇したならば、様子見をしてから決めるのはもちろんだが、多分助ける選択をするだろう。当然、タダではない。


「……あんた、怖くないの?」

「なに言ってんだ、お前。怖い? 天下の勇者が、なにを恐れることがあるってんだ」


 第二種指定災害までなら余裕で葬ってやる。盗賊なら人間確定な分、魔物よりずっと戦いやすい。


「助けましょう! 大門さんを矢面に立たせてしまって、ごめんなさい。でも、私たちもサポートならできます。ね、キョウカちゃん」

「ここで逃げたら本当にダメ人間じゃん。もうっ、あたしらがサポートするから、さっさとやっつけてよっ」


 馬上にいるからか、まさかのシノブからの積極提案だ。

 しかも俺が戦うだけではなく、二人もサポートに回るらしい。


「お前ら本気か? どんなサポートをする気か知らんが、場合によっちゃ人間同士の殺し合いだぞ?」

「いいからっ! あんたにだけ、やらせるわけにもいかないじゃんっ。いい機会だし、あたしらの実力、見せてやるわよっ」


 啖呵を切る姿はどこか清々しい。

 そうだな。どんな実力だか見当もつかんが、そこまで言うなら任せてみるか。

 途中で逃げても別にいいし、やりたいならやらせてやろう。


 腹をくくったのか、キョウカは不敵な笑みを浮かべているし、シノブも神妙だがやる気のようだ。ウサギを胸に抱えているのが、少しばかりマヌケだが。


「分かった。そうと決まれば馬は置いていくぞ。俺が先行するから後からこい。急げよ」


 万が一にも馬がやられてしまうのは避けたい。襲撃現場よりは危険は少ないだろうし、ここは置いていくべきだろう。適当な木に馬を繋いで徒歩で向かう。


 これで間に合いませんでしたでは、格好がつかん。急いで助けてやろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ