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悪党面の鬼勇者は、世界を救う対価に金と女を要求します。  作者: 内藤ゲオルグ


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逐電亡匿

 今回の討伐対象は第三種指定災害とされる魔物、その名もアムドゥス。

 初見の相手だが、契約書にある『前提条件の提示』が機能しているなら資料のとおりのはずで、問題ないと思える。


 指定災害とされるほどの強力な魔物らしく、厄介な魔法や特殊な攻撃方法を持ってはいるが、凶悪と思うほどではない。第二種指定災害を経験している俺にとっては大した相手ではないだろう。


 アムドゥスは街道に出没しては人を襲う迷惑な魔物で、これまでに遭遇していた人が全滅していたために発見が遅れたらしい。

 行方不明者の捜索に出た兵士たちがアムドゥスに出くわして、多数の被害を出しながら情報を持ち帰って発覚したわけだ。


 第三種指定災害の難易度は、例として騎士の一個中隊が決死の覚悟で挑んで勝利できるか否かといった魔物だ。

 大隊が決死の覚悟で挑む第二種指定災害と比べれば、脅威度は大分下がる。



 情報にあった場所にたどり着くと、足枷になりうる御者と馬車を退避させて辺りを見回す。


「近くにいてくれればいいんだがな」


 この辺りに出没するといっても、常に同じ場所にいるわけではないだろう。捜索は一人でやるには面倒な作業だ。


 周辺一帯を捜索しなければならないが、こういった時に役に立つ特殊能力が実は俺には備わっていた。

 それは『逐電亡匿』なる特殊能力だ。

 かつての逃亡生活の経験が表れた能力に思えるが、逃げる相手や隠れた相手、探したい対象を発見するのに役立つことが最近分かってきた。


 きっかけは些細なもので、街に買い物に出た際、シノブがはぐれて迷子になったことがあった。あいつは荒くれ者や酔っ払いを見掛けると、とっさに隠れようとする癖があるから、つい『逐電亡匿』を意識したところ、急に周囲の気配が探れるようになったという経緯があった。なにが幸いするか分からん。


 これの優れたところは、例えば漠然とでも、周囲のどこに何がいるというのが全て感知できる。

 隠れている、物陰で見えない、など関係なくだ。特に逃げようとする、あるいは遠ざかろうとするものに強く反応する。頭の中に展開するレーダーに近いかもな。


 さらには俺自身が隠れ、逃亡することも補助してくれる。

 簡単に試してみたところ、目で見られていない限り、背後に立っても気づかせない隠密性だ。これはかなり役に立つ。


 こちらは隠れている相手でも感知でき、逆に相手には気づかせない。

 気配を察知することに優れた特殊能力の前では役に立たないかもしれないが、それでも極めて有用な能力だ。

 特に遮蔽物が多い環境であれば、一方的に有利に立てる。

 勇者が備える特殊能力に相応しい、凄まじい性能だ。名称のイメージが勇者っぽくないし、むしろ悪い印象を受けるかもしれないが、俺にとってはそんなことはどうでもいい。



 『逐電亡匿』を意識して発動すると、まるでレーダーのように様々なものが感知できるし、対象の大きさや形まである程度までは分かるようになる。

 どの程度まで意識するかが問題で、細かいものまで認識するように集中すると小さな虫まで感知してしまうし、かなり疲れる。

 しかし、大雑把なレベルであれば消耗は非常に少なく、意識する距離にもよるが発動しっぱなしでも大した負担にはならない。


 討伐対象のアムドゥスは大きな一角の馬のような魔物らしいから、感知できる範囲に捕らえれば特長的な形からすぐにそれと知れるだろう。


 ちなみに感知できる距離は、全方位であれば今のところ最大で半径二十メートル程度しかないが、一方向に絞れば大体五十メートルくらいにはなる。

 全周囲索敵状態であれば、これは常に自分の周囲を把握できる状態にあるということだ。

 遠距離からの攻撃や狙撃には対応できないだろうが、近距離からの不意打ちは通用しなくなる。心強い、あまりにも優れた能力だ。



 被害報告を行った兵士によれば、襲われた時間帯は昼間であったことから、アムドゥスは夜行性ではないと思われる。

 運が良ければ早々に遭遇できるだろうが、最悪の場合は出会うどころか痕跡を見つけることすらできないかもしれない。

 実際に現場にきてみて思うが、範囲が漠然としすぎている。捜索に使える特殊能力があっても、能力の及ぶ範囲は限定的だ。


 適当に探し回って夕方頃までねばっても無理なら、素直に出直そうと諦め気味に考えた。

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