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0.なつやすみ!

「ただいまー」


 僕は扉を開きながら言う。


「おかえりなさい! おにいちゃん!」


 ヒナがキッチンに立ちながら、こちらを向いて笑顔で告げてくる。


 彼女はワンルームの殺風景な狭い部屋に与えられた小さないろどりのような存在だ。


 一日の疲れが吹き飛ぶぐらいまぶしい笑顔だった。


 その笑顔をちょっとだけ堪能した後に、荷物を洋服ダンスの横に置き、タンスから部屋着を出して着替える。


 ズボンと、Tシャツを脱ぎ、部屋着を着る。


 そして、脱いだ服を持って洗面所に向かう。


 洗面所に置いてある洗濯物かごに脱いだ服を入れて、洗面所から部屋のほうに出る。


 部屋の真ん中に置かれたローテーブルに座ってぼーっとヒナの後ろ姿を見つめる。


 料理も洗濯も掃除もできるヒナはいいお嫁さんになるだろうなあ。


 そんなこと考えていると、ヒナが振り向きながら声をかけてきた。


「ご飯作ってあるけどどうする?」


 ちょいッと首をかしげながら、ヒナはこちらのほうに質問してくる。


「じゃあいただこうかな?」


「わかった! ちょっと待ってて!」


 ヒナはそういうと、キッチンと比べると小さすぎると思うほどの体を、きびきびと動かし、夕飯の準備をする。


 白米を炊飯器からお茶碗に盛り、鍋から何かしらのおかずを盛り付けていく。


 味噌汁も同じように、鍋から盛り付けていたのが見えた。


 ヒナはローテーブルにお皿を二セットずつ並べていく。


 やった、どうやらおかずは肉じゃがのようだ。ちょっとだけ手伝うか。


 腰を上げて、冷蔵庫から水出し麦茶を出し、食器棚からコップを取ってローテーブルに置く。


 どうやらヒナのほうも準備が終わったようだ。


 キッチンから遠いほうに座る。


 ヒナは僕の向かい側に座った後、ぱちんと手を合わせる。


 それに続いて僕も一緒に手を合わせる。


「いただきまーす!」


 ヒナが笑顔で言い放つ。


「いただきます」


 僕も同じようにする。


 まず肉じゃがに箸をつける。


 ジャガイモに味が染みてなく、むしろホクホクでじゃがバターにしたらおいしいと思うほどの煮加減だった。


 まあこれはこれでおいしいかった。


「おいしいよ。この肉じゃが」


「えへへ。よかった」


 ヒナは照れたような笑顔を浮かべ、うれしがる。


 しばらく黙々とご飯を食べる。


 味噌汁をすすっていると、ヒナが、


「お兄ちゃんは明日から休みだよね?」


 と、聞いてきた。


「そうだね。明日から夏休みだよ」


 大学の夏休みは長い。去年は遊びほおけていたが、今年はヒナがいるから去年のようにはいかないかもな。


「ならどっかお出かけしたいな!」


 ヒナが来てから遠出したことない。


 せっかくの長期休暇だ。ヒナと一緒に旅行に行くのも悪くないかもしれない。


「そうだね。どこに行きたい?」


「海かプールでしょ? あとはー。そうだ! ペンギンさんも見たいな! あとライオンさんも! あとね。うーんと……ねー。 そうそう!あとスカイツリーも登りたいな!」


 全部行かせてあげたいけど、金銭的な面できつい……。


「いいね。全部連れて行って上げれるとは約束できないけど…」


「そっか……。まあ、いけるだけいきたいな」


「がんばるよ……」


 大学生には経済力がないっていうけど……。今それを身にしみて感じている。


 これでも父さんから家賃と学費を払ってもらってるからましなほうらしいけど……。


 ごめんな。ヒナ。我慢させちゃって。


 ふと、時計を見る。


 時計は9時半を指していた。


「ヒナ。そろそろ風呂に入って寝な。ごはんおいしかったぞ」


「そういってもらえると嬉しいな。えへへ」


 そういってヒナは笑顔でかわいく照れて見せる。


 かわいいなあ。娘ができたらこんな気持ちなんだろうな。


 ヒナは着替えを持って洗面所に入っていく。


 冷蔵庫からノンアルコールビールを出し、ローテブルの上に置き、開ける。


 そして一口飲む。やっぱり物足りなくむなしい気分になる。


 まあ、ヒナのためだと思えばまだましだ。


 俺は酒癖が悪いらしい。ヒナに何かしたらヒナの親族になんて言われるかわからないし。


 だから、ヒナがうちに来てからノンアルコールビールしか飲んでない。


 正直まずいけど、飲まないよりははるかにましだ。


 ちびちびと飲む。部屋には時計の針が時を刻む音だけが響く。


 ぼっーとしていると、洗面所からドライヤーの音が聞こえてきた。


 どうやらヒナが風呂から上がったらしい。


 洗面所の扉が開く。


「お風呂あがったよ」


 ヒナが髪を下した状態でパジャマを着て出てくる。


「わかった」


 そういってヒナと入れ替わりにお風呂に入る。


 シャワーをちゃちゃっと浴びて、風呂から上がり、頭をタオルで拭く。


 部屋に戻ると、ヒナが布団をしいてくれていた。


「歯磨きするからちょっと通して」


「了解」


 ヒナは俺の横をすり抜け、洗面所に入る。


 僕も続いて、洗面所に入る。


 ヒナは歯ブラシには歯磨き粉をのっけて、歯を磨き始める。


 僕も同じようにして歯を磨き始める。


 しばらくシャカシャカという音が洗面所に響き渡る。


 そう言って、ヒナは泡をぺっと洗面台に吐き出し、コップに注がれた水を口に含んで口を濯ぎ、洗面所から出る。


 そのあとに、僕も同じようにした。


「もう寝るか」


 ヒナにそう呼びかける。


「うん!」


 ワンルームに二人が寝るから同じタイミングで寝ないといけない。


 ヒナが布団にもぐりこんだのを確認して、


「じゃあ電気消すぞ」


 と電気のスイッチに手を触れながらいう。


「はーい。おやすみー」


 そうヒナから返ってきたので、


 電気を消し、自分の布団にもぐりこむ。


 しばらく目をつぶって、眠りにつくのを待っていると、


 隣からすぅすぅと寝息が聞こえてきた。


 目を開けて隣を見ると、視界にヒナの顔があった。


 天使かと思うぐらい可愛かった。


 かわいい顔して寝やがって。これなら何されても文句言えないぞ。


 そう思って、ほっぺたを人差し指で突っついてみる。


 ぷにぷにとしたさわり心地が人差し指からこちらに送られてきた。


 やわらかいなあ……。


 あまりの柔らかさに頰が緩んでしまった。


 よし、ヒナ成分を今日も補給したから寝るか。


 そう思って目を僕はつぶった。

はじめましての方ははじめまして。

玄芯 太と申します。


これからはこの作品を頑張って更新していこうと思うので、期待してるよ!って方はブクマや、評価等よろしくお願いします!

モチベーションにつながるので…。

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