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「まあ。レラ、どうしたの?」
マンマがレラを覗き込む。
レラが反転し、仰向けになった。
その右手にはハンドガンが握られている。
銃口がマンマの顔に向く。
「レラ」
マンマが、いとおしそうにレラの顔に触れた。
「これが、あなたの今の本当の姿なの? あなたの力には時間制限があるようね」
マンマの細く美しい指がレラの頬からアゴへと、なぞっていく。
マンマのエメラルドの瞳とレラの赤い瞳が見つめ合った。
マンマは思った。
この娘の眼…。
敗北者の眼ではない!
だがもう、この娘に勝ち目はない。
レラ、復讐心があなたを、死をも恐れぬ狂戦士へと変えてしまったの?
ただただ、私に逆らうだけの野獣そのものへと。
いいわ、だったら殺してあげる。
でも、その折れない心、私は好きよ。
「レラ」
マンマが言った。
「あなたの魔法は解けたのよ。安らかな死を与えてあげるわ」
マンマの両手の指先が、レラの顔に向いた。
マンマはマシンガンを発射した。
銃声。
フロア中に響く。
その銃声はマシンガンの連射ではなく。
レラのハンドガンのものだった。
マンマの左眼の部分に、銃弾による穴が空いていた。
マンマの美しい顔には、そぐわない無惨な銃創。
マンマがフラフラと2歩、退がった。
レラが立ち上がる。




