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マンマの背後で鋼鉄の扉が、ゆっくりと閉まり、ロックがかかる重低音が響いた。
「アラ? もう逃げるのは、終わり?」
マンマが笑った。
「ここは何なの?」
マンマの口調は、まるで親子の日常会話のようだ。
マンマの問いにレラは答えない。
この施設は元々、クレルラモン政府の肝いりで造られた研究施設だったが、大した成果を挙げられずに閉鎖。
塩漬け状態になっているものだった。
だだっ広いフロアの中央で2人は向かい合った。
距離は2m。
「レラ」
マンマが呼びかけた。
レラは銃を上げ、マンマの顔面に弾丸を撃ち込んだ。
もう、言葉は要らない。
復讐の業火に鉛弾の油を注げ。
敵を喰らえ。
喰らい尽くせ。
撃った。
撃った。
撃った。
「そう」
マンマが言った。
「これが答えなのね。残念だわ」
マンマの十本の指先が、レラに向いた。
マンマの指から銃弾が連射される。
レラの弾丸はマンマの身体を破壊する。
しかし、それも一瞬。
瞬く間に、元の姿に戻るマンマは不敵な笑み。
マンマの弾丸はレラに当たらない。
レラの身体は自在に伸び縮み、巧みに攻撃をかわし続ける。
かつては「お母様」「愛する娘」と呼び合った義理の親子は今、殺意の弾丸を交換し合う。
相手の息の根を止めるために。




