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レラは後部シートを振り返り、絞りだすように言った。
ターコートの砂漠の民特有の赤い瞳が激しい怒りによって、さらに、その色を増した。
「お前はあたしを要らなくなった物のように捨てた。そして、ミアを殺した」
「そうね」
マンマが言った。
冷静な口調。
「そういう見方もあるわね」
レラの赤い瞳とマンマのエメラルドの瞳が合った。
「こう考えては、どうかしら?あなたは弱かった。私のチームで最弱だった。いつも皆にバカにされていたでしょう。そのあなたが、今はどう!? 強い身体と鋼の精神を手に入れ、猛者揃いの私の部下を全員、倒したのよ!」
マンマは興奮していた。
「あなたは生まれ変わったの! 何の価値も無かった砂漠のゴミ虫から、最強の闘士へと! 素晴らしいことじゃなくって!? これも全て」
マンマの瞳が輝いた。
「私のおかげでしょう」
レラの眉が歪んだ。
だが、何も言わなかった。
口を開けば、おそらくは怒号が飛び出しただろう。
「私は優秀な部下を集めています。レラ、私の娘。戻っていらっしゃい。私の右腕は、あなたしか居ないわ」
「お前の本当の娘はイジーとワールだけよ」
レラが鉄の自制心で言った。
今にも鎖を引きちぎりそうな獣を必死で、なだめた。
「ハッ」
マンマは鼻で笑った。




