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大きなカボチャのデザインだ。
「ハッ」
マンマは苦笑した。
「バイパー」まで、お祭り気分なの?
頭が、どうかしてるのじゃないかしら?
自動で開いた扉から、マンマは車内へと乗り込んだ。
運転席には帽子を目深に被った運転手。
マンマのエメラルド色の瞳が輝く。
「お出しなさい」
カボチャのエアカーは走りだした。
窓の外を眺めるマンマは、それきり、1度も喋らない。
エアカーは街を抜け、郊外へと進む。
明らかに「バイパー」の会合場所へ行くルートではない。
しかし、マンマは何も言わない。
前方に大きな建物が見えてきた。
何かの研究施設か?
様子から見るに、今は使われていない。
エアカーは施設の地下駐車場へと滑るように入っていく。
エアカーが止まった。
「これは」
マンマが運転手に言った。
「何のつもりなの、レラ?」
マンマの言葉に運転手はビクリと肩を震わせた。
運転手の身体がドロリと溶け、ガツビィ・ブロウウィンに殺される前のレラの姿に変わった。
「何故、あたしだと?」
レラが訊いた。
声が微かに震えている。
「オホホホ!」
マンマが扇で口元を隠し、大笑いした。
「私は義理とはいえ、あなたの母親なのよ! どんな姿をしていても、ひと目で分かる。私の娘、レラだってね!」
「お前はもう、あたしの母親じゃない」




