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しかし、だからこそ激しく、強く、惹かれ合うのかもしれない。
レラは心の中で、己を叱咤した。
何を考えているの!?
まだ終わってないのよ!
しかも、最後の勝負が待ってる。
そんなに、この男が欲しいの!?
まったく、呆れるわ!!
レラは分かっていた。
もし一度、メフィストを受け入れたら、重力に逆らえず大気圏に突入する隕石のように、あっという間に落下し火だるまになるだろう。
そして、その先は燃え尽きるのか、それとも地上に激突するのか?
まだよ。
まだダメだわ。
マンマ・ハッハを地獄に叩き堕とすまでは。
絶対にダメよ。
クレルラモアは仮面祭に沸いていた。
外をねり歩くパレードの列。
皆が仮面をつけ、笑い、酒を飲み、踊り、抱き合い、口づけし、愛し合っていた。
「フン。騒々しいこと」
マンマは夜の街の熱狂に蔑みの一瞥をくれると、そう言った。
扇で口元を隠す。
こんなバカ騒ぎの日に「バイパー」幹部の集まりを開くとは、上層部はいったい、何を考えているのか?
私は新しい部下を集めるのに忙しいというのに。
通りに出たマンマの前に「バイパー」の迎えの車が止まった。
馬車を模したエアカー。
車体の前には2頭の機械馬が居る。
そして車体は。




