84
「何故、銃を換えた? あのとき、お前は俺を殺す気が無かった。何故だ?」
「あの銃は」
女が答えた。
鈴の音を鳴らすような声。
「ダミーの弾丸を装填してある。買い物客や、ジローとモッキュに当たっても怪我をさせないために」
そうか。
女はジローとモッキュと示し合わせてはいなかった。
ジローに俺を攻撃させるためにダミーで銃撃したのか。
撃たれたと思ったジローは俺に気づき、攻撃してくる。
俺がジローにかまけているうちに接近する策略か。
警戒すべきはジローではなく、女のほうだった。
「シーア・デスモティア」
女が言った。
ラスプーラは思い出した。
かつての仲間を。
「レラか!!」
ラスプーラが言った。
生きていたのか!
道理で俺の能力を知っているはずだ!
デ・レラ!
これで俺に勝ったつもりか?
俺はまだ、諦めんぞ!
ラスプーラが振り返った。
レラの両手が伸び、ラスプーラの顔を左右から挟んだ。
首をひねり折ろうとするレラの身体をラスプーラのサイコキネシスが捕らえた。
すさまじい圧力が、レラの身体を押し潰そうとしてくる。
が。
その力が、すぐに緩んだ。
ジローの撃った銃弾が正確にラスプーラの四肢に1発ずつ、計4発、着弾したからだ。
「ぐっ!!」
うめく、ラスプーラ。
自由になったレラがラスプーラの首を掴んだまま、右回りで上に跳ねあがった。
空中を側転するような動き。
ラスプーラの首が大きな音を立てて、へし折れる。
ラスプーラが死に、倒れた。
ジローは見た。
赤いワンピースの裸足の女がショッピングモールのガラスを突き破り、外へと飛び出すのを。
女は街並みへと走り去った。




