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モッキュから、さらなる弾倉を受け取ったジローは、すでに次の弾丸をラスプーラに向けて発射していた。
連射するジロー。
このままでは、やられる。
狙われている箇所は死にはしないが、戦闘不能に追い込まれる場所、腕や脚だ。
ケガすれば拘束され、警察に引き渡される。
心理的な焦りとサイコキネシスの負担から、ラスプーラの全身を冷や汗が流れた。
突然。
背後に敵意を感じた。
女だ。
赤いワンピースの女が死角を突いて回り込み、とうとう背後へと、たどり着いたのだ。
ジローに集中し過ぎて、女に対応できなかった。
サイコキネシスで女をねじ伏せるか?
いや、そうすれば、ジローの撃ってくる弾丸を止められなくなる。
もう、容量をオーバーしそうになっている!
ラスプーラの頭を激しく思考が駆け巡った。
しかし、女の敵意が途中で緩んだのは何だったのか?
この女はジローとモッキュの仲間なのか?
俺を生きたまま、捕らえようとしている?
だから、攻撃色が弱まった?
女が俺を撃ったとき、銃を換えたのは何故だ?
背後の敵意が猛烈に膨らみ、はね上がった。
違う。
女は、すさまじい敵意を持っている。
完全に俺を殺すつもりだ。
ジローが撃ってくる弾丸を止めながら、ラスプーラは不思議と冷静になり、背後の女に話しかけた。




