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それにしても、この外しかたは、ひどい。
ラスプーラは頭から雑念を追い出した。
まず第一に考えるべきは、女に近づき、サイコキネシスで殺すこと。
それだけのシンプルなものだ。
近づき、殺す。
ラスプーラは走った。
突然。
ラスプーラの頭の中の警報が敵意の存在を告げた。
(何だ!?)
背後だ。
ラスプーラへの攻撃の意志を持つ者が背後に居る。
このままの位置取りは、まずい。
新しい敵意の方向に完全に振り向けば、赤いワンピースの女に背中をさらすことになる。
ラスプーラは前進を止め、横を向き退がった。
赤いワンピースの女と、新しい敵の両方が見える位置だ。
ショッピングモールの入口に居た人々は皆、逃げ出し、誰も居なくなっていた。
否、2人だけ残っている者が居た。
その2人のうち、やたらと小さい人物が腕に着けた小型ブレスレットで、ラスプーラをスキャンしながら声をあげた。
「『バイパー』の構成員、ラスプーラ。賞金首だよ、ジロー!」
小さな小熊型宇宙人モッキュの言葉に、もう1人の人物、ジローは頷いた。
「了解、モッキュ!」
ジローが腰の大口径ハンドガンを抜いた。
ラスプーラは愕然とした。
「ジローとモッキュ」は「バイパー」のブラックリストの上位に載る強敵だ。
その2人がこの時刻、この場所に偶然、買い物に来ていたとでも言うのか!?
しかも、赤いワンピースの女が外した射撃がジローとモッキュを刺激し、俺への攻撃を誘発するとは!
こんな不運な状況が、あり得るのか!?
ジローの大口径ハンドガンが連射された。
ラスプーラを生け捕りにするため、急所は外しているが全て命中する精度だ。




