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ショッピングモールは突然の撃ち合いによって、蜂の巣を叩いたような騒ぎになっていた。
買い物客が我先にと出入口に殺到する。
コーヒーショップの他の客たちは皆、逃げだし、赤いワンピースの女だけが残っている。
女が立ち上がった。
ラスプーラは、女の両手にハンドガンが一丁ずつ握られていると気づいた。
向かっていくラスプーラに対して、女が銃を構える。
護衛たちを撃ったのとは違う銃だ。
(何だ?)
ラスプーラは違和感を覚えた。
何故、銃を変える?
さっきの銃で、そのまま俺を撃てば良いだろう?
そして、もうひとつの不可解な現象が起こった。
ラスプーラの超能力は相手が自分に激しい敵意を持つほどに、それが警報のように頭に鳴り響き、敵の姿が赤いオーラに包まれて見える。
先ほど、護衛を倒したときは爛々と光っていた、女の攻撃オーラが今は薄まっている。
(この女は俺を殺すつもりがないのか?)
どういうことなのか?
女の銃が火を吹いた。
2発、3発、4発。
女が連射する。
銃弾はラスプーラを大きく外し、後方へと飛んだ。
もちろん、たとえラスプーラに命中したとしてもサイコキネシスによって、弾丸は停止させられていただろう。
しかし。
護衛を倒したときは正確な射撃だった。
右手と左手の違いか?




