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ぼやけている視界の中に、何者かの影が入ってきた。
その人物が、顔を近づけているのか?
「あの連中、僕にまるで気づかなかった。新しいステルス迷彩装置のテストは合格だな」
謎の声の主が喋り続ける。
「このままだと君は死ぬ。それは間違いない。でも、その眼…僕の好きな眼だ。死にかけているのに、まだ何かが燃えている。これは…」
声が興奮している。
「復讐!!」
叫んだ。
「ああ、甘美なる言葉、復讐!! 僕は復讐や憎悪が大好きなんだよ! ずっと、いろんな復讐を見てきたけど、全然、飽きないんだ!」
影が激しく動いている。
「君が僕に復讐の炎を、大輪の憎悪の華を見せてくれるなら…君を助けてあげてもいい。そんなことが出来るのかって? それが出来るんだよ! 僕は『錬金術師』と呼ばれてる。他の名で呼ぶ奴らも居るが…ああ、自己紹介が遅れて申し訳ない。僕はドクター」
レラの耳は、ついに何も聴こえなくなった。
そして。
視覚も途絶え。
最後に意識が失われた。
「お姉ちゃん」
ミアの声。
遠い。
暗い。
何も見えない。
レラは必死でミアの声を聴いた。
「お姉ちゃん」
(ミア)
妹の名を呼んだ。
が、声が出ない。
何もかもが重苦しく、感覚が鈍い。
水の中に居るようだ。
「お姉ちゃん」
(ミア! ミア! ミア!)
心の中で何度も叫んだ。