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「私に逆らおうというの?」
ジェロニムは沈黙で服従の意志を示した。
「さあ、帰りましょう」
マンマが言った。
「このまま、ジワジワと死んでいくがよい。お前の大事な妹とも、すぐに逢える」
「「あの世でね!」」
イジーとワールが同時に笑った。
レラを照らすライトが消えた。
暗闇と静寂が、再び訪れた。
(ミア…)
床に這いつくばり、レラは妹のことを思った。
砂漠の貧村に生まれ、両親が同時に事故で亡くなってからは、2人だけで生きてきた。
ストリートチルドレンのような毎日の中で現れた、ひと筋の希望の光。
それがマンマ・ハッハだった。
ミアは「バイパー」の構成員ではない。
マンマや姉たちの正体も知らず、レラが犯罪者であることも知らない。
ミアだけが、レラたちとは別の星で生活していた。
レラがマンマの仕事を手伝っている限りは、ミアには12歳としての普通の日常が約束されていたのだ。
今、思えば、レラを操るための人質とも言えなくはない。
こうしている間にも、妹に危機が迫っている。
(ミア…知らせないと…あたししかミアを守れない…)
焦る気持ちとは裏腹に、冷たくなっていく身体は、まったく動かせない。
あらゆる感覚が鈍り、思考も途切れ途切れになった。
もはや、レラの生命は風前の灯だ。
(ミア…ミア…ミア…)
「やあ、お嬢さん」
突然、声が聞こえた。
耳元だ。
しかし、レラの聴覚は、すでに乏しい。
相手の声が、ゆっくりと低く、反響して聞こえる。
「ずいぶん、ものものしい…行き過ぎて、滑稽ですらある連中だったね。お嬢さんの仲間かな? いや、仲間だったと言うべきかな?」