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メフィストが言った。
レラは固まっている。
あれほど、流れていた涙が止まっていた。
「わあ。これはまた派手に殺られたね、僕は」
メフィストが自分の死体を見て言った。
「僕の最終セーブが、君がテンマを倒したところだね。どのくらい、戻されたかな?」
メフィストが短い髪の毛を掻く。
「これは…」
ようやく、レラが口を開いた。
「どういうことなの?」
「あれ? 前から説明してたよね? 僕は無駄になるのが嫌だから毎日、自分の記憶をクローンにセーブしてるんだよ。不慮の事故で死んだら、今までの研究データが全部、消えちゃうだろ?」
レラは両眼をパチパチと、しばたいた。
確かに、そんなことは言っていた…。
「また、次のクローンを培養しないと。このカプセルを壊されると意味は無くなるけど、出来る限りの保険はかけておかないとね」
「………」
「とりあえず、死んだ僕を片づけないと。床の血が、ちゃんととれるといいけど…。何だい、その顔は? 僕がキレイ好きじゃないとでも? 研究室がゴチャゴチャしてるのは、意味があって、そうしてるんだよ! 一見、めちゃめちゃに見えても、実は整理整頓されている! だから、床に血の染みが残るなんて耐えられ…」
「アハハハハハ」
レラは笑いだした。
瞳に溜まっていた涙は全て、流れ落ちた。




