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やはり、メフィストは死んでいた。
自ら望んでレラの復讐に加担したとはいえ、この結末を、あの変人は予想していたのだろうか?
復讐観察という異常な趣味の代価は自分の生命だった。
レラは泣いた。
ミアのときほどではなかったが、泣いた。
妹を失い天涯孤独になった自分のそばに居た、唯一の仲間のような存在、それがメフィストだった。
その動機は褒められたものではないが、一度、死んだレラを甦らせてくれたのはまぎれもなく、このおかしな科学者なのだ。
突然。
コンピューターのモニター群から、「ピーッ」という音が響いた。
まだ泣いているレラが、そちらを向く。
「心臓停止から10分経過」
機械音声だ。
「プログラムに従い、カプセルを開放します」
わけが分からずに、ただただ唖然とするレラの視線の先で、メフィストが、いつも気にしていた大きなカプセル2つのうちの1つが蒸気を噴出した。
前面にある扉が左右にスライドし、開放される。
蒸気が晴れていく。
そして。
一糸まとわぬ全裸のメフィストが出てきた。
髪の毛が鳥の巣ではなく、短い。
しかし、それ以外は全て完全なメフィストだった。
「うーん」
メフィストは両手を挙げ、伸びをした。
レラに気づき、こちらへ歩いてくる。
「やあ、レラ、どうした? そんな顔して?」




