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「でも、あの女はアタシたちを『姉さん』と呼んでたわ!!」


「ウソよ! そんなはずはない! アタシたちが、あんな女に負けるなんて!」


「ああ…ワール! 寒い、寒いわ! 機械の身体なのに!」


「アタシもよ、イジー! 寒い! イヤよ、こんなのはイヤよ!」


「何も見えなくなったわ! ワール! ワール!」


「イジー、ここよ! アタシはここに…」


 深い霧の中、イジーとワールの声は、とうとう聞こえなくなった。




 レラは走った。


 何度も転びそうになるほど慌てていた。


 あれほど憎んでいた2人の姉たちの最後さえ、見届けないほどに。


(メフィスト!)


 頭の中はボサボサ髪の変人の屈託のない笑顔で、いっぱいになっていた。


 レラは倉庫を飛び出す際に、メフィストの首が2人の姉たちによって、はね飛ばされるのをハッキリと見ている。


 それでも。


 それでも走った。


 何か奇跡が起き、メフィストがレラを迎えるのではないか?


 「やあ、レラ、どうした? そんな顔して?」


 そう言って、あの、すっとぼけた表情を見せるのではないか?


 そんな、いちるの望みがレラを突き動かした。


 レラは倉庫へと転がり込んだ。


 彼女を迎える声は、なかった。


 床には首のないメフィストの身体と首が転がっていた。


 首は下を向き、血溜まりが出来ている。


 レラはメフィストの首に駆け寄り、両ヒザを着いた。

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