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「さすがだわ、姉さんたち」
霧の中から女の声と、ゆっくりとした拍手の音がした。
霧から現れた女。
「「何故!?」」
2人が叫ぶ。
「姉さんたちは、お互いの動きや仕草を知り尽くしてる。だから、偽物は、すぐに分かる」
女は姉妹の顔を交互に見つめた。
「あたしは姉さんたちを別々に襲って、変身能力を印象づけた。そして、そのときに…」
女の淡々とした口調。
「姉さんたちの身体に触れた」
イジーとワールが息を飲んだ。
2人とも、身に覚えがあった。
「触れた箇所を姉さんたちに気づかれないギリギリまで凍らせた。その部分の動きが、いつもと微かに変わっているはずよ」
イジーは自分の左肘を、ワールは自分の右ヒザを見た。
「普段なら少しの変化は『調子が悪い?』で済むかもしれない。でも、戦闘中は、どうかしら? 特に、どんな姿にも変身できる敵との戦闘中は?」
「「ギャーッ!!」」
イジーとワールが、同時に叫んだ。
「姉さんたちは、お互いを偽物と思い込み、斬り合ったのよ」
女が言った。
姉妹は残った片眼で、女をにらみつけた。
「この詐欺師め!!」とイジー。
「よくも、よくも!」とワール。
しかし、どんなに悪態をつき、憤怒の炎を瞳に燃やしても、2人の頭部のダメージは、もはや致命的だった。
今は、風前の灯火が消えるまでの時間。
「シーア・デスモティア」
女が言った。
そして、霧の中に姿を消した。
((何ですって!?))
2人は顔を見合わせた。
「今のは…砂漠トカゲの言葉!?」
「そんなバカな!? あの女は死んだはずよ!!」




