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「テンマに加勢しても良かったんじゃない?」
ワールが言った。
イジーが鼻で笑う。
「あいつ、気持ち悪いから嫌い。殺られてるといいわね」
「アハハ! そうね、ホントだわ!」
2人の美しい犯罪者は、ケラケラと笑い合った。
レラが劇場近くに停めたエアスクーターに乗り、発進した。
2人のエアカーが後を追う。
「今、襲う?」とイジー。
「いいえ」とワール。
「逃げられると面倒よ。あの女のアジトを突き止めて、何者か調べないと」
「そうね」
イジーが頷く。
「みんなを殺した、あの女をアタシたちが倒したら…マンマもきっと喜んでくれるわね」
「そうよ、褒めてくれるわ。アタシたちの幹部への道も開けるかも!」
「まあ、素敵!」
2人の美しい瞳が、興奮でギラギラと輝いた。
メフィストの研究室。
すなわち、廃工場に着いたレラはエアスクーターを停めると研究室へと入った。
「お帰り」
メフィストがレラを迎えた。
「上々の首尾だね」とメフィスト。
「ええ」
レラが頷く。
「じゃあ、データを取りたいから、いつものカプセルに入ってくれるかい?」
メフィストが言った。
メフィストの言うカプセルとはレラが以前、気になっていた大きな物ではない。
倉庫の奥にある、大きさ2mほどの、寝そべって入るタイプだ。
レラの身体を造る液状金属は内蔵されているナノマシンによって、緩やかではあるが傷を再生し、メンテナンスも自動で行える。
よって、メフィストは戦闘後のレラの修理や整備はする必要がなく、もっぱらデータ収集に時間を使っていた。
レラは奥のカプセルへと向かった。
設備の陰になり、メフィストの居る場所からは見えない。




