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「こいつらの中に紛れて、1体ずつ壊していく。そのうちに、お前の本体に当たるだろう」
「させると思うか!?」
トレンチコートのテンマ…いや、敵に対してテンマ本人だと思わせる囮のアンドロイドが、女に襲いかかった。
両手で掴もうとする。
女は素早い動きで、その手をかわすとアンドロイドたちの中へと突入した。
「ぬう!?」
テンマが低い声を洩らした。
女の姿が消えていた。
先ほどの宣言通り、アンドロイドそっくりに変身し、紛れ込んだのか?
テンマは…アンドロイドたちの中に混じる本体のテンマは、操る人形たちの視界から、情報を集めた。
テンマは改造された脳から指示を出し、アンドロイドたちを一度に操れるが、同時に全ての視界を共有できるわけではなかった。
それにはもっと、高額で複雑な最新の脳手術が必要だ。
今のテンマはアンドロイド1台ずつの視界を切り替える形でしか、感覚を共有できない。
次々と視界をスイッチし、辺りを調べるが…分からない。
女が化けたアンドロイドは、どれだ?
突然、1体のアンドロイドの首が、もげ落ちた。
すぐに周りのアンドロイドたちを動かして調べるが…やはり分からない。
女は…どこだ!?
テンマは慌てた。
これは、まずい。
窮地と言えた。
また、1体。
今度は胴体に大穴を開けられた。




