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「ンーンーンー」
テンマの上半身がバネのように、元の位置に戻った。
「アバババババ!!」
頭の無いテンマが笑った。
「このドアホウめが!!」
天を仰いで笑い続ける。
「俺を殺したつもりか? とんだ見当違いだな、おい! 俺は、この通りピンピンしてるぞ!」
2人の周りをアンドロイドたちが取り囲んだ。
およそ、100体にも及ぶアンドロイドの無感情な顔が全て、女を注視している。
「ヒヒヒッ! なんだ? 怖くて声も出ないか!? もう、諦めたのか?」
テンマは肩を揺らし、両手を広げて勝ち誇った。
「分かってた」
女が言った。
「は?」
テンマが間の抜けた声を出す。
相手の反応が、予想と違った。
テンマは戸惑った。
「お前の本体が、そいつじゃないのは想定してた」
女がテンマを指した。
「アンドロイドたちの動きで分かった。そいつの守りは薄すぎる」
「………」
テンマが女を、にらみつける。
笑顔が消えていた。
「お前は圧倒的な数的有利がないと戦えない卑怯者だ」
女が言った。
「臆病者のお前は、この」
女が周りのアンドロイドを見回す。
「アンドロイドたちの中に隠れてる。こいつは囮だ」
今度は、頭部が無いトレンチコートのテンマを指差す。
「ハハハ」
テンマが再び、笑いだした。
「ウハハハ!!」
「………」
「それが分かったから、何だ? お前は、これから八つ裂きにされる! この数のアンドロイドからは逃げられんぞ!」
「あたしが変身できるのを見ただろう? 何にだってなれる。お前のオモチャたち、ソックリにだってな」
女が言った。
口の端を少し上げ、バカにしたような口調になった。




