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「「アタシが殺すわ!」」
イジーとワールが同時に言った。
「待ちなさい」
凛とした声。
(マンマ・ハッハ! お母様!)
しずしずとレラに近づいてくる影。
姉2人に似た完璧なプロポーション。
盛り上げ、束ねられた美しい髪型。
優雅な貴婦人のドレスに身を包んだ「バイパー」の幹部、マンマ・ハッハ。
きらびやかな扇を広げ、口元を隠しつつ、レラに顔を寄せた。
「レラ」
優しく呼びかける。
「お母様、勝手をしたのは謝ります。どうか、どうか許してください」
レラの涙ながらの謝罪に、マンマのエメラルド色の瞳が大きく見開いた。
「ああ、レラ、私の愛しい娘」
豪華な指輪をはめたマンマの細い指が、レラの頭を撫でた。
「砂漠で初めて出会ったとき、私はお前に才能を感じたのよ。必ず私の役に立ってくれると思った。だから今まで、ずっと面倒を見てあげたの」
「お母様…」
「愛していたわ」
「………」
「さっきまでは!」
レラの頭を優しく撫でていたマンマの手が、やおら髪の毛を、わし掴みにした。
「それなのに何なの、この情けない有り様は!?」
レラはマンマの両眼に激しい怒りと、明からさまな蔑みを見た。
マンマが扇をたたみ、レラのアゴに当て、顔を上げさせる。
「とんだガラクタを掴まされた! お前は、ただ、負けたのではなくてよ! このマンマ・ハッハの顔に泥を塗ったの!」
「お母様…」