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 信じられなかった。


 自分が。


「ライジング・ケルベロス」史上、最強の戦士である自分が。


 騙され、毒を盛られるなどという結末は。


「いつだ!!」


 ジェロニムは叫んだ。


 屈辱が、動かぬ身体を吼えさせた。


「戦いが始まってからでは、間に合わない。だから、あたしはもっと前に毒を使った」


 レラの言葉に、ジェロニムはハッとなった。


「まさか…女!!」


 理解した。


 ジェロニムは、いつから自分が死への階段を登り始めたのか、ついに思い当たった。


 レラが立ち上がった。


 電撃のダメージは残っているが、両脚を踏ん張り、ひざまずいたジェロニムの前に立った。


 レラの身体が変化した。


 そして、違う姿になった。


 そこには、族長のテントでジェロニムの顔に戦化粧を施した少年が立っていた。


「貴様ーーーーっ!!」


 ジェロニムは絶叫した。


 弱りきっている身体でも、叫ばずには居られなかった。


 何だ、このペテンは!?


 戦いが、神聖な戦いが汚されている!!


「あらかじめ、この子を捕まえて、入れ替わった。戦化粧の描きかたは事前に調べた。覚えるまで、何度も練習した。染料をつける順番、線の引きかたまで完璧に。テントを出て、隠していたバイクに乗った。バイクしか通れないルートを走り、ここでお前を待った」


 レラが少年から、ショートボブの女の姿に戻った。

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