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ジェロニムが、苦しげに言った。
息が荒い。
「『ライジング・ケルベロス』の戦士たちは」
レラが口を開いた。
その双眸には、敗者の屈辱は微塵もない。
むしろ。
「あらゆる毒物に対する耐性を幼いときから鍛え、遺伝子操作も行う。だから、毒は効かないと聞いた」
ジェロニムの両眼が大きく開かれ、レラの顔を見た。
ジェロニムは感じていた。
嫌な予感を。
「あたしは新しい毒を作った。ナノマシンだ。とても小さい。皮膚から体内に浸透したナノマシンは、体温をエネルギーに分裂と増殖を繰り返す。運動で体温が上がると、ナノマシンは、さらに活発さを増す。身体の隅々まで行き渡った後、ある定数まで到達すると、ナノマシンは神経を狂わせる強力な電磁波を一斉に放出する。それによって、身体のあらゆる機能は弱まる」
ジェロニムが左ヒザも地に着いた。
唇を噛みしめる。
身体がユラユラと前後に揺れ始める。
「お前が毒に気づかないようにするためには、この方法しかなかった。戦いの途中で異常を感じれば、逃げだすかもしれない」
ジェロニムは否定の唸りをあげた。
「戦士」は逃げたりしない。
「戦いの体温上昇でナノマシンは、さらに増殖し、今、やっと効果を現した」
「いつだ…」
ジェロニムが訊いた。
全身に玉のような汗をかいている。
「どうやって毒を…」




