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ガラスメガネを装着していない通常モードのレラだ。
身体と容姿にも完全に慣れてきた。
このモードで着ている服は、変身時には体内へと収納される。
何にでも姿を変えられるというのは、それはそれで自分というものが曖昧になっていくような、妙な感覚を覚える。
「どうって…。憎悪だよ! 復讐だよ!? それなりの達成感があるんじゃないの!? どうなんだい?」
レラは呆れ顔になった。
「まだマンマ・ハッハの手下を3人倒しただけ。それだけよ」
レラも、お茶をひとくち飲んだ。
2人は雑多に物が並んだ長テーブルの端の狭いスペースにお茶を置いて、飾り気のないシンプルなパイプ椅子に腰かけていた。
(懐かしい味)
ターコートのスパイスは、故郷の貧村を思い出させる。
そう、あたしはターコートの砂漠の民、デ・レラ。
それを再認識させてくれる。
「なるほど。そういう気持ちなのか」
メフィストは熱心にレラの話を聞いている。
楽しそうだ。
「次の準備は?」
レラが訊いた。
「『戦士』と『操り師』対策だね。ああ、どちらの用意も終わってる。バッチリだよ」
メフィストが笑顔になった。
レラはその顔を見て、少し和んでいる自分の心にふと気づき、首を軽く横に振った。
この男は頭が、おかしいのだ。
他人の復讐を観察し、興奮する変態野郎。




