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これは、良い状況とは言えない。
まず、ブースが激しい音を立てているため、キシャールは超聴力のレベルを上げられない。
聴こえすぎるのだ。
頭が割れるような苦痛を味わうハメになる。
よって今、キシャールは「DJブースが鳴っている」という事象しか把握できていない。
自分をサポートするはずの手下たちからの応答が全くないのは、すでに何者かによって倒された可能性が高い。
これは良くない。
騒音の元を断たねばならない。
キシャールはDJブースへと走りだした。
超聴力を使うために、音を止めなければ。
キシャールは音楽の元へと跳び、両手の爪で攻撃した。
DJブースが切り刻まれ、四散する。
ブースのライトが消え、再びダンスフロアは暗闇に包まれた。
キシャールは愕然とした。
BGMが止まない。
(何だと!?)
敵は別の音源を用意している。
しかもそれは、フロアのあちこちから聴こえてくる。
敵はキシャールの能力を知っているのだ。




