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右腕で首を絞め、その手首を左腕でロックした。
スリーパーホールドの体勢だ。
「なるほど」
マスルが、笑った。
「お前は殺し屋ってわけか。『バイパー』に逆らうとは『黒龍』か『フェンリル』あたりの回し者か?」
マスルが敵対組織の名を挙げた。
女は答えない。
「で?」
マスルは首を絞められているというのに、完全に普通のトーンで話をしている。
「『バイパー』の幹部マンマ・ハッハの第1の部下、この『剛腕』マスル様を、そんな生っちょろい力で絞め殺せると本気で思ってるのか?」
女はけして、力を入れていないわけではない。
事実、女の腕は筋肉が張り、グイグイとマスルの首を締めつけているのだ。
しかし、強化装甲で覆われたマスルの首は全くダメージを受けていない。
サイボーグであるマスルは、頸動脈による失神も関係ない。
すなわち、女の攻撃は何の効果もマスルに及ぼしてはいないのだった。
「この程度の殺し屋を送って来やがるとは、オレも舐められたもんだぜ」
そう言うとマスルは、ゆっくりと立ち上がった。
右手を上げ、女の身体を掴もうと伸ばす。
女を引き剥がし、床に叩きつけてやる。
マスルは、そう考えていた。
「?」
マスルの手は、何も掴めなかった。
女の身体があると思われる場所を探ってみるが、何もない。




