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マスルの進撃は止まらない。
両腕を振り回し、何人もの警官を殺傷しては、合間で車両を掴み、放り投げる。
あちこちで爆発が起こり、辺りは、さながら戦場と化した。
マスルの攻撃にレラモ警察の包囲はズタズタに引き裂かれ、警官たちは次々と戦闘不能に追い込まれる。
敵の抵抗が弱まるのを見て、マスルの手下たちが動いた。
銀行へ乗りつけた装甲車両へと、奪った金塊を運び入れる。
エンジンをかけ、燃え上がる炎に照らされ、鬼神の如くそびえ立つマスルの隣へと、車両を横づけした。
マスルが悠々と装甲車両に乗り込む。
「出せ」
マスルが命じると、装甲車両は警察の多数の死傷者を尻目に、銀行を後にした。
マスルたちはレラモ警察の追跡を振り切り、表向きはショーパブのアジトへと到着した。
装甲車両は地下の駐車場に隠し、マスルはアジトの自分の部屋へと入る。
後始末は手下たちの役目だ。
赤い照明に照らされた広い室内には、大きなソファーとベッドが置かれている。
マスルは冷蔵庫から瓶ビールを取り出すと指先で器用に弾き、栓を抜いた。
大口を開けて、中身を流し込む。
2本、3本と飲み続けた。
マスルの鋼鉄のボディには、改造前の味覚や酔いを楽しめる疑似感覚が備わっていた。
この男が好むのは酒とドラッグ、そして。
部屋のドアが手下によって開けられ、その後ろから1人の女が部屋へ招き入れられた。
「ボス、女です」
手下の男が下品な笑いを浮かべて言った。
女は、ショーダンサーか。
若く美しく、派手なメイク。
きらびやかなガウンを身に、まとっている。
マスルが手下に手を振った。
「出ていけ」の合図だ。
「お楽しみを」




