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駅内に散布したジャミングナノマシンが効果を発揮している。
(殺れる!)
レラはナイフを取り出した。
独特なデザインのターコートのナイフ。
音も無く背後から忍び寄り、チャツネ・ブロウウィンを刺してやる。
そして、その次はガツビィ・ブロウウィン。
サポートポッドを諦めて、チャツネがライトをつけた。
だが、遅い。
レラはチャツネの背後で、ナイフを振りかざし、背中へと突き立て。
銃声。
レラは自分の左胸を見た。
風穴が開いている。
心臓が撃ち抜かれていた。
チャツネが振り返り、ライトが、立ち尽くすレラを照らす。
「姉ちゃんよぉ。ブロウウィン家を殺ろうなんざ、100年早いぜ」
ガツビィ・ブロウウィンの声。
「気配を消してるつもりかもしれねぇが、わしには分かる。姉ちゃんの『殺気』ってやつがな」
レラは、その場に倒れた。
銃創から流れ出た血液が、血溜まりを作る。
「わ! 危なかった…。じいちゃん、ありがとう」
チャツネ・ブロウウィンの声。
「チャツネ」
「何?」
「おしっこ」
「わー! まだ出さないでよ! そ、外に行こう、外に!」
2人が去ったのか、駅に静寂が訪れた。
どのくらい、時間が経ったのか?
「がはっ!!」
レラが動いた。
吐血している。
だが、生きていた。
ガツビィの銃撃で破壊された心臓とは別の心臓が、かろうじて彼女の生命を繋いでいた。
しかし、このままでは、いずれ失血死する。
レラは何とか、上半身を起こした。
「「アハハ!」」
突然、同時に響く2人の女の笑い声。
よく似た声。
レラの、よく知る声だ。
複数のライトが、レラを照らした。
レラは暗視ゴーグルを外した。
眩しさで何も見えない。