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炎と冷気の両モードのMAXパワーも、工場の外(メフィストの研究室はスミガンの外れにある、付近に誰も住まない廃工場だった)で試してみた。
どちらも、すさまじい威力を発揮したが、わずか数秒でエネルギーが底をつき、ガラスメガネがレラの体外へと分離した。
そして、平凡で非力な身体へと戻ってしまう。
この新しいボディは強力だが、使いかたを入念に吟味しなければならない。
諸刃の剣だ。
暴れ馬だ。
何も考えずに乗れば、すぐに振り落とされ、首の骨を折って死ぬ。
倉庫の1画を占めたコンピュータ画面の前に座ったメフィストの後ろで、レラは黙々と自らの技のキレを確かめていた。
かつてのレラの姿で、格闘、ナイフ、射撃、全ての精度を確認する。
日増しにレラと新しい身体のシンクロ率は上がっていった。
最初の頃のぎこちなさは無くなり、自分の意志が100%、隅々まで行き渡る感覚。
気力も充実してきた。
(戦える! 奴らを倒せる!)
レラの心は激しくたかぶった。
メフィストの前にあるディスプレイのひとつが、痩せた若い男を映しだした。
「ドクター」
男が呼びかけた。
「やあ、マクスウェル。どうした?」
画面を見ずに、メフィストが答える。
「どうしたって…あんたが俺に依頼しただろ?『魔弾』ガーウィンの動きだよ」
情報屋マクスウェルは呆れた。




