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メフィストは怯み、手を離した。
レラがアクセルを開いた。
バイクは走りだし、倉庫を出て行った。
絶望感を浮かべた顔でメフィストは、それを見送った。
「君には…」
メフィストが呟いた。
「僕が必要なんだ」
レラとミアを乗せたバイクはスミガン郊外の田園地帯を走っていく。
スミガンにしては珍しく、温かい爽やかな青空が広がっていた。
スミガン特産の日照時間が短くとも、よく育つよう品種改良された一面のブドウ畑を見下ろせる丘の上にバイクは停まった。
バイクに跨がったまま、レラは泣きだした。
子供のように泣きじゃくった。
ミアは姉が泣くのを何も言わずに見守っていた。
どのくらい時間が過ぎただろう。
レラが泣き止んだ。
「お姉ちゃん」
ミアが呼びかけた。
「さっきのお兄さんが、そんなに好きだったの?」
「違うわ」
レラは首を横に振った。
「今でも死ぬほど好きよ」
惑星ターコートの砂漠に建つ王宮の大ホールに人々が、ひしめき合っている。
皆、ターコートの7人の皇子の1人、メルドラが、砂漠の街を襲撃する「砂賊」たちを討伐するために集めた荒くれたちだった。
受付で登録を済ませるべく並んでいる。
「めちゃくちゃ並んでる!」
あまりの人の多さにジローは驚いた。




