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「いやいや、カプセルが壊される可能性だってあるだろ! 僕は、かなりのリスクを負って君を守ったんだ! 君が…その…何だ…分かるだろ!? 君だって、同じ気持ちだろ!?」
「黙れっ!!」
レラがメフィストの身体を持ち上げ、宙吊りにした。
メフィストが苦しさに、うめき声をあげる。
「お姉ちゃん!!」
全く事情が分からず、目を白黒させていたミアが慌てて姉を止めた。
レラは力を緩め、メフィストを床に落とした。
メフィストは座り込み、苦しそうに咳を繰り返す。
やっと咳が止まった。
「あなたはいつでも、あたしにミアの話を出来たのよ。なのに…」
レラがモニター群を指した。
「復讐のデータを完成させる前に、あたしに打ち明けて謝らなかった」
レラはメフィストに背を向けた。
「あたしは、そうして欲しかった」
レラの言葉に、ついにメフィストは反論しなかった。
無言でレラの背中を見上げる。
レラはモニター群へと歩いた。
メフィストが立ち上がった。
転がりながらレラを追い抜き、モニターの前に立つ。
キーボードを素早く操作した。
レラのほうを振り向く。
「君の『復讐データ』は削除した」
メフィストが言った。
子供が許しを乞うような表情。
レラは首を横に振る。
ひどく、悲しげだった。




