10
では、この男の言っていることは事実なのでは。
「あなたは誰?」
「ええ!?」
男は眼を大きく開け、大げさに驚いた。
「君を見つけた場所で自己紹介はしたのだけど…あ、途中で君が死んだのか! 僕はメフィスト。『マッド』って呼ぶ奴も居るが、自分では『錬金術師』が気に入ってる。ドクターであり、科学者。君を助けたのは、僕の趣味の復讐観察…」
メフィストが、そこまで言ったところで。
「ミア!!」
レラが叫んだ。
「わ!! だから、大声はやめてくれって!」
「ミアが危ないわ! 早く知らせないと!!」
「ミア?」
メフィストが首を傾げる。
「あたしの妹よ! マンマたちが妹を殺そうとしてる! 早く知らせて!」
「うーん。何だか、よく分からないな」
惑星シャールから、さほど遠くない位置にある惑星ザウムウッド。
緩やかな丘陵地帯にある、ミアの住む家へと、レラとメフィストは、やって来た。
あの後、面倒くさがるメフィストを大声で従わせ、ミアに連絡したものの、応答は無かった。
「あたしが死んでから、どのくらい経ってるの!?」
「脳からAIへのコピーは、けっこう繊細なんだ。まずは脳から情報を収集して、その後でAIに移し換える。そこで慎重にしないと完璧な」
「どのくらい経ったのか言え!!」
「わ!! 怖いなー。えーっと、2日くらいかな? 僕は天才だから、宇宙中を捜したって、これほどの早さで」
メフィストの言葉はもう、レラには入ってこない。
2日…。
マンマの手下は…あるいは宣言通りにイジーとワールは、ザウムウッドのミアの家に向かったのではないか?
絶望感が襲ってきた。




