1
霧の惑星シャールの大都市スミガン。
今は使われていない地下鉄の駅改札付近。
犯罪組織「バイパー」の構成員、デ・レラは闇の中で息を潜めていた。
レラは17歳。
2つの太陽をもつ砂漠の惑星ターコート出身者の特徴である赤髪の短髪。
意志の強さを感じさせる、パッチリとした瞳も燃えるような赤色。
しかし今は、その両眼は暗視ゴーグルによって隠されていた。
ゴーグルには、偽の情報によって、ここに誘き寄せた2人の獲物が映っている。
ガツビィ・ブロウウィンとチャツネ・ブロウウィン。
「バイパー」と敵対し大損害を与えた、この2人の殺し屋には多額の賞金が懸けられていた。
ましてや、ガツビィは老齢とはいえ、かつて「早撃ちガツビィ」として恐れられた伝説級の人物である。
その首を獲れば「バイパー」内での株も急上昇し、幹部に昇格するのも夢ではない。
そうなれば、自分と妹をターコートの貧村から引き取り、犯罪者として育てたマンマ・ハッハ、そして、何かとつらく当たってくる2人の義理の姉たちとの関係も改善されるのではないか?
そう考えるとレラの、ターコート人特有の2つの心臓は、激しく高鳴り脈打つのだった。
「じいちゃん、ちょっと待って! サポートポッドが変だよ。もしかして、ジャミングされてる?」
チャツネ・ブロウウィンの声。
慌てている。