表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/42

第23話 北条芳介の事件簿1 水色の研究 解明編

 軟式テニス部女子部室水没事件、その後始末となる掃除や各所への手配、そして気になるところの捜索を済ませたあと、僕は秋葉野君と白銀さんを生徒会室の奥の部屋に呼び出した。

 

 姉はいつも通り、だらしなく寝転がってテレビゲームをやり続けていたので、話に集中できるようにリセットボタンを押してあげた。

 なんか奇声を発していたが、まあ仕方ないだろう。

 主人公連盟の4人で、共有しておかなくてはならないことがあるのだから。

 

「みんな、揃ってくれてありがとう。今日の事件の真相を、この4人で共有しておこうと思ってね」

 僕はそう言ってから、自分の指を口に持っていく。

 白銀さんと秋葉野君はその意味を理解してくれたようで、表情が一変する。姉は相変わらずぼんやりした表情をしているが。

 

「で、実際に話を進めるまえに……各自、自分の荷物や服に異物がないか確認してほしい」

 僕がそう言うと、三人はそれぞれゴソゴソと自分のバッグをひっくり返したり、ポケットに手を突っ込んだりしていた。

 姉のバッグから大量のゴミやお菓子が出てきて、他の二人を驚かせていた。

 

 荷物や服には、とくに異変はないようだった。

「よし。とくに問題はないようだね。先ほどこの部屋も隅から隅まで捜索したが、盗聴器などはなかった。安心してほしい」

 他の3人の表情がますます険しくなる。

 

「私たち、誰かに狙われているってことですか?」

 白銀さんの質問に、僕は答える。

「そう考えた方が、しっくりくるのさ」

「じゃあ、今日の事件も?」

「ああ。おそらく白銀さんを狙ったものだろうねぇ」


「なんでわかるんですか?」

「まず、今回の犯人の侵入経路。僕は、簡単なドアのカギをピッキングで開けたはずだ、と言ったろう?」

「ええ」

「あれはミスリーディングさせるためについた嘘だ。じつは部室棟のドアのカギは、素人のピッキングで開けられるほどやわなカギじゃあない」

「……すっかり信じてました」


「フェンス側を登って侵入し、また降りたのだと、僕は考えている。フェンス側の窓は空いていたからね。」

「……え、でもフェンスは目が細かいし、登れるはずが……」

「なんらかの人知を超えた力が使われたのだろうねぇ。それも、ロープを使った不思議な力が」


「ってことは、魔法?」

「ああ。そして犯人は、窓が開いていた陸上競技部の部室に侵入した」

「軟テじゃなくて?」

「そうだよ。陸部の部室内に侵入中、外からドアを開けられそうになって、慌てて注意をそらすために魔法を使ったのさ。おそらく隣の部屋を水没させちゃうような、大掛かりな魔法をね」


「でも、注意をそらすにしては、オーバースペック過ぎませんか?」

「? むしろ逆だよ。被害のオーバースペックぶりこそがまさに、注意をそらすためだったという証拠なのさ。異様な被害の大きさだが、嫌がらせにしては効果が低い。よく考えてごらん? もし本当に嫌がらせをしたいなら、僕なら携帯や教科書の入ったカバンを狙うね。ところが、カバンは高いところにあってみんな無事だった」

「そういえば!」

「使える魔法が、そういうものだけだったのだろうね。そうやって隣の部室に注意をひきつけているうちに、陸部の部室内でなんらかの目的をやり遂げて、窓から逃げ去ったのさ」

 

「じゃあ、俺が見た青い光は?」

 秋葉野君がらした頬をでながら言う。

「もちろん、犯人が使った魔法の光さ。青い光をともなう魔法だったのだろう。そしてその魔法の光は、なろう病患者以外には感知できなかったのさ。僕たち以外の人が、妖精やチェシャ猫を見られないのと同じだね」

「あー、たしかに」

「そして魔法を使える人間が多少大胆な動きをしてまで知りたいことと言ったら……」

 

 秋葉野君が大きくため息をつき、答えを言う。

「白銀さんの個人情報か」

 僕はうなずく。

「この前、白銀さんと秋葉野君の写真を無断で掲載していたSNSの謎アカウントと、犯人は同一かもしれない」

 そのアカウントは結局、わずか3日間だけ存続した後、消えていた。嫌がらせだとしても意図がよく分からないものだった。

「そうだねぇ。その可能性は高そうだ」

 

 僕は秋葉野君、白銀さん、姉の3人を見回してから、宣言する。

「犯人の目的は不明だ。しかし間違いなく言えることはある。未知のなろう病患者が、僕たちからそう遠くないところに潜んでいて、白銀さんを狙っている。しかもそいつは、野蛮な手段も違法な行為もお構いなしの、とっても危険な奴だ」


「……心あたりはないんですけど……」白銀さんが途方にくれた表情をしている。

 僕はさらに続ける。

「とはいえ、今回の事件のドタバタした様子から考えるに、犯人は単独犯だろう。こちらの強みは、強力な魔力を持つ4人が揃っているということだ。犯人が尻尾を出すまで、できるだけこの4人は単独行動をしない方がよいだろう。僕と姉はきょうだいだから登下校も一緒にできるからいいとして、……さて、君たちをどうするかだが……」

 

「私たち……は……」

 白銀さんが妙に戸惑った様子だ。秋葉野君もどこか落ち着きがない。二人の思考が僕の脳に流れ込んでくる。

「んんん? これは……え、部屋がつながって……まさか君たち、同棲してるのか?」

 

 秋葉野君の顔がまたたくまに真っ赤になる。

「違う違う! 同棲じゃない!」

 秋葉野君が慌ててまくしたてる。

「俺、『栄光の左腕』の効果を知らないまま、白銀さんの『鏡の国』をしばらく触っちゃって。それで意図せず二人の部屋がつながったままになっちゃったんだよ」

 

 僕は二人の脳内でよみがえっている記憶を読み取る。

「なるほど……やっぱり同棲じゃないか!」

「いやいやいやいや」秋葉野君が焦りながら否定するが、それはおかしい。

「でも君の脳裏に、全裸で寝る白銀さんが見えていたぞ!」

 

「違う違うそれは! チェシャ猫がそうだって言ってたから!」

「え!チェシャがそんなことを?! 私のプライバシーをペラペラと……後でお仕置きしなくっちゃ」

「うへへへへ。二人とも青春しとるのお。じゃあ私の部屋も二人の部屋につなげてよ。みんなで一緒にお泊り会したりとかさぁ」

「姉さんが入ってくると混乱するだけだから黙っておいてくれたまえ」

 

 姉は「えー、芳くんたら、魔法が解けるとほんと意地悪だなぁ」とかなんとか言いながら悲しそうな顔をしている。それを無視して僕は秋葉野君を見据える。

 

「それにしては秋葉野君、やけに鮮明な映像だったぞ。本当に覗いたりしてないだろうな」

「してないしてない。白銀さん本当だよ! だってほら、二人の部屋は布でさえぎられているわけだし」

 

 白銀さんが僕の目を見ながら口を開く。

「うん、もちろん私は秋葉野君を信じてます! 秋葉野君なら、私の部屋を覗いたりはしていない……と思う……たぶん」

「最後自信なさそうになってるじゃん!」秋葉野君が悲痛に叫ぶ。

「……信じてはいるけど、北条君が『やけに鮮明な映像』って言ってたし」

「やっぱり全然信じてないじゃないか」

 

「そうだ! いいこと考えた!」白銀さんが僕を見つめてくる。「ねえ北条君、私の脳裏を読んでみて」

 

 そう言われて脳裏を読むと、そこには全裸の白銀さんがいた。

「ちょっ!」

「どう? 私の知ってる私の身体と秋葉野君の頭の中の私の身体、比べてみてどう?」

 白銀さんはどうも僕のことを男だと認識していない節がある。じゃあいいよ、知りたいなら教えてやろう。そしておののくがいい。

「……びっくりするほど同じだね」

 

 とたんに白銀さんの顔が真っ赤になる。

 だったら最初から聞かなきゃいいのに。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ