第19話 主人公同盟
黒板には、白銀さんが書いてくれた、4人全員の使える魔法とランクが並んでいる。
さらに白銀さんは、少し小首を傾げてから、再び笑顔で提案をする。
「じゃあ次は、私たちが一緒に活動するにあたっての、目標やルールを決めていきましょう。まず、それぞれが望むことを列記しましょうか。私から書いていきますね」
そう言って白銀さんは2つを書き始める。
●白銀の望み
1、長い時間の巻き戻し、もしくは人を生き返らせる魔法を持つ人に出会いたい。
2、半侵入状態の妖精さんを、「赤の王」で元いた世界に戻してあげたい。
「私はこの2つです。……あ、あともう一つ書いてもいいですか?」
そう言いながら白銀さんは、3つめを書き足す。
3、この力を正しいことに使いたい。
満足そうに一人でうなずいてから、白銀さんは俺の方に視線を投げる。
「秋葉野くんは?」
俺は自分の希望を答え、白銀さんが板書していく。
さらに北条姉弟も希望を述べ、白銀さんはどんどん書いていく。
●秋葉野くんの望み
1、なろう病であることを知られたくない。目立たず、ひっそりと生きていきたい。そのために情報を共有していきたい。
●北条くんの望み
1、姉の洗脳から逃れたい。
●生徒会長の望み
1、魔法の力だと知らなかったが、いずれにせよみんなにチヤホヤされて嬉しかった。できれば今後もみんなにチヤホヤされ続けたい。推薦で一流大学に行って、大学でもチヤホヤされ続けたい。大学卒業後は美男子で大富豪で高身長の男性を魅了して結婚してみんなにうらやましがられながら世界一周のハネムー
ここまで板書を続けたところでようやく、白銀さんはペラペラ話を続ける生徒会長を止める。「ちょ、ちょっと待ってください。人生設計になっちゃってますよ!」
「まあ要するに、魔法を使って一生だらだらしながらチヤホヤされたいのよ」
生徒会長はこともなげに言う。
「魔法の力を、そんなことに使っちゃっていいんですか?」白銀さんがイライラしたように話す。
「なんで? せっかく魔法があったら使うでしょ」生徒会長が反論する。
「でもほら、洗脳しちゃう魔法はよくないですよ」
「なんで? 別に法律で禁止されてるわけじゃないし。それに私の魔法がダメで、あなたの魔法が大丈夫な理由って、何なの?」
「え……?」
「メロメロにするだけなら法的な問題はないんだから。道徳観も人それぞれだし。あえて言えば物理法則やら自然の摂理に反しているかもしれないけれど、それはあなたの魔法も同じでしょう」
「……なるほど。そう言われると……そうかもしれませんね……そういう意見もあるのか……」
白銀さんが簡単に説き伏せられてしまった……。これも生徒会長「謎カリスマ」の力なのかもしれない。
それに気をよくしたのか、生徒会長がさらに口を開く。
「ねえねえ。こうして4人のなろう病患者が集結したのだから、私たちのグループに名前をつけるべきだと思うの」
生徒会長の提案に、俺たちは互いの顔を見合わせる。
でもまあ、たしかに名前くらい付けてもいいのかもしれない。
「そうですね。私は賛成です」
白銀さんが応じる。
「白銀さんがOKなら」
俺も応じる。
「秋葉野くんがOKなら」
北条弟が答える。あれ? なんかおかしくね? まあいいけど。
「じゃあ、各自が案を述べていこうよ。白銀さん、案を列記していってもらえる? 私はねぇ、『北条珊瑚と仲間たち』がいいな」
生徒会長の発言に白銀さんは一瞬笑おうとして、すぐに笑いを引っ込める。
どうやら本気らしいと判断したようで、すごくやる気なさそうに板書をする。
生徒会長の提案は止まらない。
「珊瑚の会」
「珊瑚団」
「生徒会長と仲間たち」」
などなど、ひたすら生徒会長が自分の名前を冠した名前を挙げ続ける。ほっとくと無限に挙げ続けそうだ。
さすがにそれではまずいと思ったのか、北条弟が慌てて口を開く。
「裏生徒会、というのはどうだろうか」
「なんかエロいから却下」と、生徒会長が言う。
「エロい? どこが?」
「私がなんとなくそう感じるからダメ!」
「まったく姉さんは……日頃からふらちな本ばかりたしなんでいるから……。では……四人連盟とかはどうだろう」
北条弟がめげずに新しい案を挙げる。
「でも今後も増えるかもしれないでしょう」と生徒会長が口をとがらせる。
「正義連盟、とかは? いいと思いません?」白銀さんがやけに熱っぽく提案する。
「正義とか。プププ、中二病っぽいから没!」生徒会長が切って捨てる。
白銀さんはかつて見たこともないほどへそを曲げた顔をしている。あんな顔もするんだ。
「あ、じゃあ」俺は思いついた名前を挙げる。「主人公同盟、とかは?」
「あ、いいですね!」と言って白銀さんは板書をする。「生徒会長の案よりずっといいです」
「僕もいい名前だと思うよ」と北条弟も言葉を重ねる。
黒板に『主人公同盟』の文字が躍る。
「うーん、私はもっと斬新な名前が良かったけど……まあ悪くないかもしれないかなぁ」生徒会長が偉そうに言う。
「ね。いいですよね」
「うんうん。いいいい」
白銀さんと北条弟も言う。
「あ、ダメだ」俺は致命的なところに気づいてしまう。「『西遊記』の主人公って、三蔵法師じゃなくって孫悟空じゃね?」
「大丈夫よ。私が主人公じゃないわけないじゃない」生徒会長が意味の分からないことを言って胸をはる。
「私、『西遊記』の最初期のバージョンでは三蔵法師が明確に主人公だったというのも、どこかで読んだ覚えがあります」白銀さんがやけくそ気味に言う。
「じゃあ、決まりね! 私たちは『主人公同盟』よ!」
生徒会長が嬉しそうに宣言をした。
板書を終えた白銀さんが俺に近寄ってきて耳元でささやく。
「ま、三蔵法師って、私が読んだ岩波文庫版だと2巻でようやく登場するんですけどね」
一応ここで一区切りです。次の章から戦争っぽさが少し出てくる予定です。
隔日ペースで恐縮ですが、キリのいいところまでしっかり更新を続けさせていただきます。
なお、今日はアクセス記録によると全話読んでくださった方がいたようで、嬉しかったです。
読んでくださった方、ありがとうございました。




