第18話 そもそも魔法はオカルトにゃ
こうして、白銀さんと俺の二人だけだった「なろう病」同士の集まりに、生徒会会長と書記を務める北条姉弟が加わった。
白銀さんは、以前俺にそうしてくれたのと同様に、チェシャ猫に指示して「なろう病」と「魔法」について、現状わかっている情報をすべて北条姉弟に教えてあげるのだった。
その説明が一通り終わったところで、白銀さんは生徒会室の壁についている黒板に近寄る。そしてチョークを手に取る。
「私たち4人が宿しているもの、そして使える魔法。それを一度、整理しておこうと思います。まずは私から書きますね」
●白銀ゆめ 1年、陸上部
宿しているもの アリス(『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』) Sランク
使える魔法
1、「鏡の国」 Sランク
鏡を行き来することができる。触れている人物もいっしょに通れる。
条件:自分が見たことのある鏡、もしくは体を触れている人物が見たことのある鏡のみ。
2、「白の女王」 Sランク
5分だけ時間を巻き戻せる。触れている人物もいっしょに戻れる。
条件:1日に設定できる巻き戻し起点は1か所だけ。ただし何度でも巻き戻せる。
3、「赤の王」 Sランク
触れたものを異世界に送還することができる。
条件:今のところとくになし。妖精以外は試したことがない。
4、「ドリンクミー」 Aランク
巨大化する。
条件:最大でも元の身長の4倍くらいまで
5、「チェシャ猫」 Aランク
チェシャがいろいろ分析してくれる。カワイイ!
条件:
ここまで書いて、白銀さんが手を止める。
「そういえばチェシャ、あなたを呼び出す魔法の条件って、なにかあるの?」
「わらわの気分しだい、というくらいかにゃあ」
「でも、チェシャはいつでも私の言うことを聞いてくれるよね」
「今のところは気分が乗っているからにゃあ」
「そっか。いつもありがとう」
と言いながら、白銀さんは「チェシャ猫」の条件のところに「なし」と書き込む。
「それと……」白銀さんが言いにくそうに口を開く。
「これはあまりにも直接的な凶器だから、使うことはないと思うんですけど……」
そう言って白銀さんは板書を追加する。
6、「ジャバウォックの鉤爪」 Dランク
両手の爪が長くて硬い鉤爪になる
条件:きっと使わない
「では、次に秋葉野くんを書きます」
白銀さんが板書をはじめると、
俺の隣にいた北条芳介が、小声でチェシャに言葉を投げかける。
「いいのかい? 君、あえて言っていないことがあるようだけど……」
チェシャは北条芳介に一瞬冷たい視線を送り、小声で返事をする。
「自分にかかわりのないことに、あまり首を突っ込まないことにゃ」
それから急に、チェシャはニヤリと笑う。
「しっかし……わらわの心も読めるとは……さすがはSランク魔法だにゃあ」
そんなチェシャと北条芳介のやり取りも、ギリギリ俺の耳に入っただけで、白銀さんや生徒会長には聴こえていないようだった。
白銀さんは粛々(しゅくしゅく)と板書を続けて、ついに俺の項目を書き終えた。
●秋葉野爽太 1年、帰宅部
宿しているもの ドン・キホーテ(『ドン・キホーテ』) Sランク
使える魔法
1、「栄光の左腕」 Sランク
魔法もしくは魔力でできたものを5秒以上触り続けると魔法の効果を『不滅化』、つまり固定化することができる。
条件:今のところとくになし
2、「ドゥルシネーア」 Aランク
あらかじめ精神が狂気に満たされているため精神攻撃一切無効。また両目を見つめながら頭部を触れあうことで、他者の精神系の状態異常を解除することもできる。
条件:今のところとくになし
3、「マンブリーノ」 Cランク
守備力が人間離れしたレベルまで強化される。常時発動。
条件:今のところとくになし
4、「主人公微補正」 Eランク
微妙な補正。常時発動。
条件:?
5、「騎乗微補正」 Eランク
微妙な補正。常時発動。
条件:?
「こんなものかしら?」
白銀さんがチェシャに尋ねる。
「そうだにゃあ。今のところはその5つしか鑑定できていないにゃ」
俺としては、白銀さんが普通に「帰宅部」と書いたことが微妙にショックだ。せめて空白にしておくとかさぁ……。
「じゃあ、次は北条くんを書きます」
●北条芳介 1年、生徒会書記
宿しているもの シャーロック・ホームズ(『シャーロック・ホームズ』シリーズ) Sランク
使える魔法
1、「観察能力超補正」 Sランク
相手の考えていることを読み取ることができる。芳介くんが読み取ろうとしたときのみ発動。
条件:今のところとくになし
2、「格闘能力補正」 Dランク
ボクシングやフェンシングなど格闘能力が強化される。敵が近距離に来たときのみ発動。
条件:今のところとくになし
「他に北条くんの魔法は?」
白銀さんが投げかけた質問に、チェシャが答える。
「鑑定できたのはまだそれだけにゃ」
「きっと、もっといろいろ使えるんでしょうね。楽しみ」
「『観察能力超補正』だけでも、かなり使える能力だと思うけどにゃ。たとえば誰かに攻撃されたときも、先読みで動くことができるからにゃあ」
「ああ、なるほど。それはたしかに便利かも。……では、満を持して。最後に生徒会長を書きますね」
●北条珊瑚 3年、生徒会長
宿しているもの 三蔵法師(『西遊記』?) Aランク
使える魔法
1、「謎チャーム」 Aランク
説得力のない人間的魅力で、周囲の人間を魅了した状態にする。常時発動。
条件:4人までの人数制限。放っておくと距離的な近さ、精神的な近さにより4人は常時入れ替わる。チェシャの分析によると、かける相手は選択可能なはず、とのこと。
2、「謎カリスマ」 Cランク
あらゆる言葉に説得力のないカリスマ性が付与される。常時発動。
条件:今のところとくになし
「私だけ宿しているのがAランクって、ちょっとどうかと思うんだけど」
生徒会長が不満そうな声を上げる。
チェシャがニヤニヤしながら答える。
「にゃあああ。それは鑑定結果がそうだから仕方ないにゃ。Aランクでも数億人にひとりレベルのレアさだにゃ」
「それそれ。それが不思議なんだけど、さっきはSランクは数十億人にひとりレベルだって言ってたわよね。でも日本の人口が1億2千万でしょ? なんで数億人にひとりレベルが1人、数十億人にひとりレベルが3人も、同じ高校にいるのよ」
「それはにゃあ。わらわも不思議に思っているにゃあ」
「億とかいう数字にも根拠はないんでしょ。オカルトじゃない」
「にゃはははは。そもそも魔法はオカルトにゃ。でもこれが、現実なのにゃ」




