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第17話 北条姉弟のチートな魔法

「と、いうことで、秋葉野くん。私、このお二人も私たちの仲間に入っていただければな、って思うんですけど……」

 白銀さんが上目使いに俺を見ながらお願いをしてくる。

 俺が、仲間を増やす場合は俺の許可を得ること、と言った約束を守ってくれているようで、それ自体は嬉しい。

 

 だが、本当にそれでいいのかは、また別の話だ。

 俺は少し思案してから答える。

「この二人がどんな能力の持ち主かを、知った上で決めてもいいんじゃないかな」

 

「なるほど。それはたしかにそうですね。チェシャ、お願い教えて!」

 白銀さんに促されて、チェシャ猫の目が赤く光る。

「にゃあああ。では鑑定するにゃ」

 

 北条姉弟は、チェシャ猫の瞳の色が青から赤に変わったことに戸惑っているようだ。

 そんな二人を見据えながら、チェシャ猫は口を開く。

 

「おおお……二人とも凄い魔力の高さにゃ。じゃあ、まずはメスの方から言うとするかにゃ。宿しているのは三蔵法師。レア度はAランクにゃ」

 

「でも、三蔵法師って男でしょう?」

 白銀さんがチェシャに疑問を投げかける。

「にゃああ。誰を宿すかは結婚みたいなものにゃ。相性はよくないといけないけれど、同一人格である必要はないにゃ。そもそも宿す相手は実在した人物ではなく、物語の登場人物だからにゃあ」

「じゃあ、宿しているのは実際にシルクロードを旅した三蔵法師ではなくて、『西遊記』の三蔵法師なのかしら。そっちの三蔵法師は、作中で妊娠しちゃったりしているし」

 

 知らなかった。『西遊記の』三蔵法師って、男なのに妊娠しちゃうのか。

 めちゃくちゃな話だな。

 

「そのあたりはわらわの知るところではないにゃ。わらわが分かるのは、そのメスが宿しているのは三蔵法師である、ということだけにゃ」

「なるほど。私たちを状態異常にした魔法は鑑定できる?」

「垂れ流し状態だから鑑定可能にゃ。一つは『謎チャーム』。Aランク魔法にゃ。まったく説得力のない魅力で、このメスの半径1メートル以内の人物を4人まで魅了状態にできる状態異常魔法にゃ。放っておくと精神的・距離的近さによって4人は入れ替わり続けるが……ある程度、術者が選択できるはずだがにゃあ」

 

「私がかかったのもそれね」

「そうにゃ。あともう一つ。『謎カリスマ』というCランク魔法も垂れ流しているにゃ。これは、このメスが発するあらゆる言葉にまったく根拠のないカリスマ性が付加されるというものにゃ。こちらは効果が薄いものの、人数制限はなくて、言葉を聞いたすべての者に効果があるにゃ」

「へええ。どちらも完全に洗脳特化型の能力なのかぁ」

「今、そのメスから鑑定できる能力はこの2つだけにゃ」

「……まあ、けっこう納得できるかも……。三蔵法師自身は大した法力もないただの人間なのに、孫悟空・猪八戒・沙悟浄・馬に化けた竜を従えちゃってるしね」

 

「次は、オスの方を鑑定しようかにゃ」

「チェシャ、お願い」

「にゃあああ、こっちも凄いにゃあ。宿しているのはシャーロック・ホームズ。Sランクにゃ」

「またSか。なんか私たち、むしろAランクの方が少数派だし、B以下を知らないよね」

「にゃあああ、Sは数十億人に一人レベルらしいんだがにゃあ」

「本当? 同じ学校に3人目よ」

「おかしいにゃあ」

 

 白銀さんはチェシャとの会話を中断し、北条芳介の方を向く。

「ねえ北条くん。最近、魔法とか超能力とか、そういう類のものを使えるようになりませんでした?」

 北条芳介は唇を一度なめてから答える。

「ああ。僕はたしかに最近、人の心の中が読めるようになった。だから君たちの言う『魔法』のニュアンスもなんとなくわかる」

 

「え、じゃあ、俺のことを破廉恥破廉恥言っていたのは?」

 俺は思わず声を上げる。

 北条芳介はこちらを睨みつける。

「そうだよ! 君は何かと言えば頭の中で他人を全裸にくのだから。しかもやたらと鮮明に! 君ほど破廉恥な男は見たことがない! ほら、今も頬を赤らめて可愛いなぁとか、体も赤くなっているのかなぁとか、そういうどうしようもないことを考えて! ……いや、もうだから僕を女体化するのはやめたまえ!」

 

「にゃああ。今まさに魔法を発動しているにゃ」

 真っ赤な瞳のチェシャ猫が嬉しそうな声を上げる。

「『観察能力超補正』、Sランク魔法にゃ。相手の微妙な表情や仕草の変化から、相手の心の中をそのまま読み取ることができるようになる魔法だにゃ」

「すごい。完全に超能力の世界ね」白銀さんが嬉しそうに言う。「どうですか? 秋葉野くん。二人とも凄い魔法を使えるなろう病患者ですし、便利そうでしょう?」

 

「……分かったよ。いいんじゃないかな」

 俺は答える。

「わあい。ありがとう秋葉野くん。ということで、お二人も、私たちの仲間になっていただきたいんです」

 そして、白銀さんは悪そうな笑顔を浮かべる。

「もちろん、なってもらえますよね?」

 

「……分かった。姉さんの魔法から逃げるためには、君たちの仲間になるしかないな」

 北条芳介があっさりと言う。

 

「私は? 私のメリットは?」

 生徒会長が口をとがらせながら抗議する。

 

「いや、姉さん。それは違うよ。姉さんのためにも、この人たちの仲間になった方がいい」

 北条芳介が生徒会長に冷たい声音で呼びかける。

「なんで?」

「見た目はまあまあだけど勉強も運動も性格もなにもかもダメな姉さんが……」

「ちょっと!性格がダメってどういうこうとよ!」

「そんな姉さんがここ半年くらい意味不明にモテていたのも、人望があると勘違いして立候補した生徒会長に本当になってしまったのも、先生になんでも言うことを聞かせて生徒会室を好き放題改造していたのも、すべて『なろう病』の魔法のせいだったのだよ」

 

「さすが『観察能力超補正』の持ち主、話が早いですね」白銀さんが嬉しそうに言う。

 

 だが、まだ生徒会長は口をとがらせている。

「えぇー。違うよ! みんな私の魅力にメロメロなんだって」

 そんな生徒会長に、北条芳介は憐れむような視線を向ける。

「そう。ダメ人間な上に頭の血の巡りも悪い姉さんをこのままにしておくと、無防備すぎる。いつか誰かに悪用されたり、迫害されたりしかねない」

「大丈夫よ! みんな私の魅力にひれ伏すだけなんだから」

 

 北条芳介はため息をつく。

 そして心底嫌そうな表情を見せたあと、両目を閉じ、そして見開く。顔にはさわやかな微笑みを浮かべていた。ああこれ、演技してるな。

「姉さんがモテすぎて、悪い虫がつくと僕は悲しいんだ」

 見え見えの演技に、生徒会長はちょっと嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 北条芳介はそのまま、芝居じみた語りかけを続ける。

「姉さんの魅力は、たくさんの人を呼び寄せてしまう。いい人だけではない。悪人も呼び寄せてしまう。それが僕は心配なんだ。姉さんは僕の大切な姉さんだからね。だから、的確な分析能力を持つこの二人と組んでおけば、あとあと役にたつはずだ。なにより……」

 北条芳介は俺と白銀さんに鋭い視線を投げかけてくる。

「この二人は善人だ。白銀さんは100%善人だし、秋葉野君の方は異常なムッツリスケベだが、とりあえず善人の範疇はんちゅうにはギリギリおさまってはいるような気がしないでもない。だから、二人と組むべきだ」

 

「……わかったわ。芳介がそこまで言うなら」

 生徒会長が満面の笑みで答える。

 ちょろすぎるだろう。

 

「決まりね。よろしく、北条くん。あなたを歓迎します」

 そう言って白銀さんは、北条芳介に手を差し出す。

「あ……ああ。よろしく頼む」

 北条芳介はその手を握り返す。

 

 それから白銀さんは生徒会長の方にも手を差し出す。

「白銀ゆめです。よろしくお願いします」

 生徒会長は残念そうな表情をしながら口を開く。

「あなたみたいな美少女がしたってくれて、私は嬉しかったのよ。でもそれは、私の魔法のせいだったのね」

「あそこまで強烈な好意の示し方は、魔法にかかっていない限りはできないと思います。でも、私は生徒会長さん、素敵なお姉さまだと思っていますよ」

「ありがとう。うふふ。私の魅力に気づいてくれてうれしいわ。私は北条珊瑚ほうじょうさんごよ。よろしくね」

 そう言って生徒会長も手を差し出し、白銀さんの手を強く握った。

 

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