第14話 生徒会長と秘密の異常な部屋
俺と白銀さんがドアを開けた部屋の中には、信じられない光景が広がっていた。
普通は学校の生徒会室といったら、机とパイプ椅子が並んでいて、ホワイトボードが壁に立っていたりするものだろう。
ところが。
この部屋は入口が靴置場になっていて、それ以外は全面畳敷き。
奥の方には安楽椅子1脚がおかれていて、その上に北条芳介が足を組んで座っていた。
そして、今まさに読んでいたと思われるハードカバーの本を膝に置いて両手を山の形に突合せながら、こちらに飛び切り可愛い笑顔を向けてくる。
「やあ、だいぶ待ちわびたよ」
安楽椅子が学校の教室にあるのもおかしいのだけれども、それ以上にありえないのは、安楽椅子から少し離れたところに敷布団が1枚敷かれていることだ。
その敷布団の上に誰かがうつぶせに寝ている。
掛け布団を丸めて上半身を乗せ、視線の先には、なんとテレビが置かれている。手元でカチャカチャ音をさせて、テレビゲームを熱心にやっている。こちらの方を振り返ろうともしない。
女性用の制服を着ているから、女子生徒なのだろう。
うつぶせに寝ているとはいえ、両足をだらしなく開いているので、あとちょっとで下着が見えそうだ。
当たり前だが、校内にはテレビもテレビゲームも持ち込み禁止となっている。
教室内でテレビゲームをやっているとか、ちょっともう意味が分からない。
「姉さん、二人が来ましたよ」
北条芳介が布団の上のだらしない女子生徒に声をかける。
「ちょっと待って、今ボスだから」
布団の上の人物は、そのままテレビゲームに熱中している。どうやらシューティングゲームをしているようだ。
北条芳介は、昼休みに俺たちを脅迫した時、自分の姉は生徒会長だと言っていた。
そして今、彼は「姉さん」と呼びかけていた。
つまり、布団の上にだらしなく寝っころがってテレビゲームに熱中している人物が、わが校の生徒会長だということになる。
おいおい大丈夫なのか、うちの高校は。
「仕方がないなぁ、姉さんは」
そう言って北条芳介は安楽椅子から立ち上がり、部屋の隅に重ねてあった座布団を3枚持ち上げて、ぽん、ぽん、ぽんと放り投げる。
それから、芳介自身がその中の一枚にすとんと座る。
おいおい、「トンビ座り」とか「女の子座り」とか呼ばれる座り方じゃあないか。
男性用の制服を着ているけれど、やっぱり女の子なんじゃないのか? そういえば心なしか胸も膨らんでいるような……。
トンビ座りの美少年(?)は、上目づかいにこちらを見つめてくる。
そしてなぜか、急にほほを染める。
「君はとんでもなく破廉恥な男だな」
俺は慌てて否定する。
「いやだから、女子トイレに入ったのは間違えてしまったからであって……」
「違う。そういう意味ではないんだ。まあいい、さあ、君たちも座りたまえ」
そんな可愛らしい声で促されたら、従わないわけにいかない。
俺はあぐらをかいて座り、白銀さんはピシッと背筋の通った正座で座る。
「今日はよく来てくれたね。歓迎するよ。作戦会議とやらを開かず、授業終了後すぐに来てくれたら、もっと歓迎したんだけれど」
美少年(?)はそう言ってニヤリと笑う。
どうやらこちらの動きは、すべて把握されているみたいだ。
「まあいいや、この部屋には僕と姉しかいないんだ。だから、君たちとの会話をじっくり楽しむことができる、って寸法さ」
「俺たちの方は、さっさと会話を切り上げたいな。とにかく、写真は消去してくれ。そして、これ以上俺と白銀さんにつきまとうな」
「まあそうツンケンしないでもらいたいな。君たちと敵対しようと思っているわけではないのだからね」
「敵対するつもりはないというなら、じゃあなぜ、SNSで写真を拡散した」
とりあえずこういうことは、「疑惑」レベルでも吹っかけてみた方が良いだろう。
「……ん? なんの話だ?」
「いや、俺と白銀さんの写真3枚をツイッターに投稿しただろう」
「ほう……そんなことが……」
そう言いながら美少年はこちらの目をじっと見つめてくる。
「ははは、そんな写真は僕は知らないね。僕が持っている君たちの写真は2枚のみ。1枚は昼休みに見せた写真、そしてもう1枚は、これさ」
そういって掲げられたスマホの画面には、ちょうど女子トイレの鏡の中に、俺が入っていくところが写されていた。
俺の右腕は完全に鏡の中に入ってしまっている。
おそらく白銀さんはすでに鏡の中に入っていった後であろう。
俺の後ろにいるはずのチェシャ猫は写っていない。おそらく、魔法で現れた存在は写真に写らないのであろう。
いずれにせよ……。
いきなり決定的な写真を突き付けられてしまった。




