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第12話 ふたりの秘密があっけなく……

 井の頭公園で白銀しろがねさんの魔法を見せてもらった翌日。

 登校して教室に行くと、なんだかいつもと様子が違っていた。

 

 いつもはクラス内で空気のような扱いをされている俺なのに、どうも、みんなが俺の方をチラチラ見ているような気がする。

 

 一限目の終了後、その理由が分かった。

 隣の席の純一が、教えてくれたのだ。

「お前さあ、昨日白銀さんとデートしてたんだって?」

「ふえっ」

 思わず変な声が出てしまった。

 

「やっぱりそうなのか」純一がニヤリと笑う。「お前も隅に置けないな」

「いやいや、そんなことしてねぇよ」

「だって、ほら。写真が回ってきた」

 そう言って純一は自分のスマホをいじって、画面を見せてくれる。

 

 そこには、たしかに、昨日井の頭公園に行った俺たちが写っていた。

 しかも3枚も。

 俺はまあおしゃれ目オタクスタイルだからバレバレだとして、白銀さんはサングラスと帽子で顔を隠しており、完全にそうだとわかる訳ではないのだが……。

 

 でもまあ、顔だちが整っていてスタイルが良く、値段が高そうな服を着ている、というのを総合的に判断すると、どう考えてもバレバレだった。変装の意味なし。

 

「なあ、純一。これは誰から送られてきたんだ?」

「えっと……ユウタだな」

 ユウタもクラスメートで、話しやすいやつで仲はいい。

 

 俺はすぐにユウタの席に行って写真について聞く。

 ユウタも、自分に写真を回してきた相手を教えてくれる。

 そうして4人目までたどって、ようやく大元が分かった。SNSへの投稿だったのだ。

 

 完全に捨てアカ。

 アカウント名は「都立中野北高校研究会」。4人目の奴は、たまたま高校名で検索して、そのアカウントを発見したらしい。

 

 何よりおかしいのは、そのアカウントの投稿は一つだけだったことだ。

「井の頭公園」という簡単な文章とともに、3枚の写真だけが貼られていた。

 意図は不明。ただ、俺と白銀さんを晒そうという悪意しか感じられない。

 

 結局、そこまでたどったところで二限目が始まってしまった。

 当然、それどころではないので内容は頭に入らない。

 俺はコソコソとスマホをいじって、白銀さんに謎のアカウントの件をショートメールで送る。

 

 優等生の白銀さんが、授業中にスマホを見るとは思ってなかったが……。

 しかし、すぐに返事が送られてきた。

「昼休み、いつもの場所で」

 

 

 昼休みになるとすぐ、俺は財布だけ持って一人で教室を飛び出す。そして常に人気のない、校舎裏のトイレの横までかけていった。

 数分遅れで、白銀さんもやってくる。

 

「あの写真、クラスの女子の間でも広がっているみたいです」

「じゃあもう、うちのクラスはみんな知ってるんだろうな」

「ごめんなさい。目立っちゃいましたね」

「なろう病の人間が2人して行動して、それがバレちゃうのはまずいな……」

 

「それと……」白銀さんは顔を赤らめ、言いにくそうに先を続ける。

「女子たちの間では、私たちが付き合ってるって話になってるらしくって……」

 いやまあ、高校生の男女2人が井の頭公園を一緒に歩いていたら、そういう話になるだろう。

 

「なので私、秋葉野くんはそういう関係じゃない、恋愛対象じゃないよ、って、みんなに強く言っておきました! みんなも『ま、そうだよねー』って言ってたんで、ちゃんと納得してくれたみたいです!」

「お、おう……あ、ありがとう」

 ……白銀さんの表情や声音の感じだと、俺に対する悪意はなさそうなんだけど……釈然としない。

 

 

「またこんなところで逢引きかね?!」

 

 突然背後から声をかけられ、俺たちは慌てて後ろを振り向く。

 

 そこには、小柄な女の子がいた。俺はもちろん、白銀さんよりも背が低い。ちょっと気の強そうなショートカットの美少女で……って、あれ? 着ているのは男子の制服だった。いやでも、女の子だよな……?

 

「どなたですか?」

 白銀さんがおっとりと笑顔で質問をする。

 

「僕かい? 僕の名前は北条芳介ほうじょうほうすけ。君たちと同じ1年生で、C組にいる」

 たしかに「僕」と言ったが、でも声の感じは完全に女の子だ。しかも超可愛い声。

 でもまあ、名前からすると男なのだろう……。

「私はA組の白銀ゆめです」

「知ってるよ。だから『また』と言ったろう?」

 

 そう言って、目の前の美少年(?)はスマホの画面を見せてくる。

 写真が見える。

 だが、SNSに晒されていいた写真とは違う。もっとヤバい写真だ。

 それは、この女子トイレに、手をつないだ白銀さんと俺が入っていくところの写真だった。

 

「いやぁ、本当にびっくりしたよ。学校内のトイレで堂々といかがわしい行為に走る男女がいたとはね」

「いやいや、それは誤解だ」俺は慌てて言葉を重ねる。

「白銀さんがこの落し物をしちゃって、それを一緒に探しているうちに間違って入っちゃって……」

 

 美少年(?)は、ニヤリと黒い微笑を浮かべる。

破廉恥はれんち行為の申し開きは、生徒会室で聞こうじゃないか」

「え、なんでだよ。そんなとこ行かねぇよ」

「僕は生徒会書記なんでね。生徒会長を務める僕の姉が、君たちと会うのを楽しみにしているのさ。放課後、二人揃ってくるように」

 

「あれ、今、生徒会書記っておっしゃいましたよね!」白銀さんが声を上げる。「あの有名な【美少女名探偵】って、あなただったんですね!」

「違う! 僕は男だ!」

「え、でも美少女名探偵って聞きましたけど」

「違うって言っているだろう! まあいい、とにかく放課後、生徒会室に来るように」

 

「私、部活があるので無理です」

 白銀さんが笑顔で拒絶する。そりゃそうだ。

 

 しかし美少年(?)はまったく動じない。

「そんなことはあらかじめ調べておいたさ。陸上部の顧問と部長にはすでに姉から連絡を入れてある。生徒会から呼び出しをかけたから今日は休ませてもらう、ってね」

 

 うわぁ……これはやばい……。

 

 

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