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第11話 赤の王と白の女王

 唐突に光が消え、俺はおそるおそるまぶたを開けた。

 白銀さんが得意げな表情をしながら空っぽの右手を開いている。

「うふふふふ。どうです? 今のがSランク魔法、『赤の王』です。妖精さんを異世界に戻してあげました」

 

「へえ。召喚の逆、異世界送喚みたいな?」

「そうですね。チェシャによると、妖精さんたちは本来、異世界で魔力のみで構築された生命体らしいんです。だけど最近異世界と現実世界の壁がなぜか薄くなって、ときどき双方の世界の狭間に落ちてしまうらしいんです」

「へえ」

「チェシャは『半侵入』、って言ってましたけど。妖精さんは魔力のみで構築されているので飲食する必要もないらしいし、知能もあまり高くないらしいんで、チェシャはそのまま放っておけばいいとか言うんですが……」

 

 急に、白銀さんの表情が暗くなる。底が抜けたような暗さ。

「でも、一人でさまようのは可哀想じゃないですか」

 

 

 さて。『赤の王』の凄さはわかったが、周りにパニックはさらに拍車がかかっただけだ。巨大化少女にびっくりしたら、さらにその少女が発光したのだから、そりゃそうだ。

「で、このパニックはどうにかできるのか?」

「じゃあ、時間を巻き戻しましょうか。私の右手をつかんでください。あ、秋葉野くんの左手は危険なんで、右手でつかんでください」

 また手をつなぐのか……とは思いつつ、俺は言われたとおりにする。

 

 白銀さんは空いている左手を掲げ、その手の平の中に再び半透明の懐中時計を現出させる。そしてスイッチを押す。

 その瞬間世界全体がぐにゃり、とひしゃげた。

 思わず目を閉じたが、おそるおそるまぶたを開けて見る。

 

 まず、違和感を感じたのは自分自身だ。

 自分の立っている位置と姿勢が変わっている。

 白銀さんの手を握ってもいない。

 

 白銀さんは少し離れたところで微笑んでいる。

 

 そして、周囲のパニックは収まっていた。

 逃げて行った人々が、今はのんきそうな顔をして普通に散歩を楽しんでいる。

 

「え? なにこれ?」

「これが『白の女王』の力です。事前、もしくは事後に設定した時間まで、戻ることができるんですよ」

「えええええ、すごい力じゃん」

「しかも、その時に私に触れている相手も、一緒に戻れるんです」

「タイムスリップしたんだ、すげえぇ!」

 

「でもまだ最大5分しか戻れないし、戻るポイントは1日1回しか設定できないんですけどね。ちなみに、今回みたいに先行して戻るポイントを決めておくこともできるし、なにかあった後に5分前に戻ることも可能です」

「凄いなぁ。たしかにSランクなのは納得だ。さっきの巨大化した魔法もS?」

「ああ、『ドリンクミー』ですね。それはAランクです」

 

 そうか、ラノベで出てきたら世界観ぶち壊しだと叩かれそうなド派手な巨大化魔法より、『鏡の国』(鏡で行き来自由)、『白の女王』(時間の巻き戻し)、『赤の王』(異世界送喚)の方が価値が高いわけか。

 

「そういえば、時間を戻したんなら、妖精も元通りなんじゃないのか?」

 だが、妖精はどこにも見当たらない。

「そうなんですけれど、妖精さんはそもそもいるべき世界を間違っていたので、『赤の王』での世界変更はさかのぼって有効らしいんです。あの妖精さんは、元いた世界で、同じ場所に座っているはずです」

「なるほど」

「ね。私の妖精さん保護活動は、こんな感じです。私の魔法は、今日お見せしたのですべてです。まだまだ、新しい魔法を身につけられたらなぁと思っているんですが……」

 

「な、なるほど……」

 こっちは転び方が面白くなる「主人公微補正」(Eランク)とかのクズ魔法ばっかりなんだが……。

 悲しい。

 

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