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汚嬢様の野望。東京23区版。

 学校に到着する。

 今日は転校生、つまり主人公「遠藤さくら」がやってくる日だ。

 彼女は一般家庭出身で、逆境も明るく堪え忍ぶようながんばり屋の女の子だ。

 ……と、いう設定の女の子だ。


 一発ぶん殴りたい。

 べ、別に破滅させられたのを恨んでなんかいないんだからね!


 なぜなら、遠藤さくらに正体は男に全力で媚びまくる系女子だ。

 男をゲットするためには女子マネすらもじさないビッチオブビッチだ。

 その証拠に学園の支配者たる王子に猛アタックをかけるのだ。

 かけまくるのだ。

 逆ハーっていうかモヒカンヒャッハーなのだ。

 究極の肉食系。

 一発ぶん殴りたい。

 なぜ、そこまでやって女子に袋叩きにされないのか?

 それには理由がある。


 この学校には支配者が何人か存在する。

 まずは私、武藤亜矢。

 高飛車で意識高い系。

 視野が狭いくせに自意識過剰。

 そのくせ親の権力を笠に着るお嬢様。

 INT低めSTR高めの脳筋。

 しかも嫌なやつ。

 一見すると学園の人気者。

 実際は学園史上始まって以来の嫌われ者。

 支配力と尊敬の違いがわからないバカなのだ。

 親の権力がなくなったら誰も助けてくれなかったのがそれを証明している。

 私だって友達にしたくない。

 急に死にたくなった件。


 もう一人が王子。

 高藤恭一。

 高藤財閥の一人息子。

 ルックス、親の財力、人格、運動能力。いいケツ。

 すべてが完璧だ。

 身長が足らない修ちゃんでは僅差で勝てない。

 でも全く興味はない。

 なぜなら彼は絶対に私の趣味を理解しないからだ。

 いやそんな甘いものではない。

 自分自身の狭い見識で正しくないと判断したものは、私の意思は無視してでも正しくさせようとするだろう。


 私の薄い本も「汚物は消毒だー!」と焼却炉行きになるに違いない。

 それやったらコイツ殺して私も死ぬ。

 それ以外の些細なことにも口を出してくるはずだ。

 ホッピーとか。タタミイワシとか。


 うっわ、めんどくせえ!


 そんな男はいらん!

 私は今の私が大好きなのだ。

 このスタイルを変えるつもりは1ミリもない!

 なぜ一周目はあんなに執着したのだろう?

 今考えれば、産廃レベルの男だぞ。

 と、いうことで今回はパス。

 追いかけないし、触らない。


 他にも運動部をまとめている剣道部の不和也和(ふわなりかず)

 文化系をまとめる御堂翔(みどうかける)

 それに上級国民のご子息で、素行の悪い……いわゆるヤンキーをまとめる朱井龍介(あかいりゅうすけ)などがいる。

 どいつもこいつもカッコイイ漢字だ。ひろしくんやたけしくんがいない。

 それにしてもホント力関係がわかりやすい学校だこと。

 その中に主人公も入っているのだ。

 でも今回の私には学校内のカースト制度は関係ない。

 知らねえよボケ。

 勝手にやってろ。


 こんな連中の相手より、今回の私には優先することがあるのだ。


「修ちゃん。悪いけど、三年の仲間沙羅って娘を調べて。まだ辞めてないはずだから」


「誰です?」


「友達……になる予定の()


 私にはくだらない恋愛などに時間を割く余裕はない。


 なぜなら友達を助けなければならないのだ。



 昼休み。

 屋上で私たちはご飯を食べていた。

 私と修ちゃんが食べているのは私が作ったお弁当だ。

 中身は昨夜作っておいた、鶏肉のマヨネーズ炒めと、冷蔵庫の残り物のほうれん草やらエノキとベーコンを炒めた「謎炒め」だ。

 あとはプチトマトや、ちくわにキュウリを刺したやつとかを空きスペースに適当に詰め込んでビジュアルを整えたテキトーな品である。


「お嬢様……いつの間に……料理をおぼえたのですか?」


 修ちゃんが震える声で聞いた。

 答え。キャバ嬢時代。

 自炊しないと金かかってしかたないからね。

 ふふふふふふ。スーパーの半額シールだけがお嬢様ではないのだよ(錯乱)

 おっとコイツは修ちゃんには言えないぜ。


「お嬢様はなんでもできると紀元前からきまってるのよー」


「そのいちいち胡散臭え発言で台無しなんだよ!」


「えー」


「まったく、なんでこうなったのか……」


 酷いことを言いながらも修ちゃんは私の弁当に箸をつける。

 口に運ぶと修ちゃんは少しだけ顔を歪めた。


「うん……まあ、『お母さんの味』でいいんじゃないか」


 私は『お母さんの味』が褒め言葉だって知っている。

 修ちゃんのお母さんも、うちのお母さんも同じ事故で死んだのでいない。

 家には専属のコックさんがいる。

 だからこういう家庭料理は食べられない。

 修ちゃんは家庭の味に飢えている。


「えっへっへー。このマザコン♪」


 こちょこちょ。


「うるせえ」


 そう言って修ちゃんは私の頭をコツンと叩く。

 もちろん痛くない。

 幼なじみのじゃれ合いだ。


 修ちゃんは最近では、度重なる私の努力により昔のようにじゃれ合いもしてくれるようになったのだ。


 リスタートからせくはら……

 じゃなくてスキンシップを繰り返し、ようやく軽口を叩くまで気を許ししてくれた。

 どうだスゴイだろ!

 

 修ちゃんとは一周目では一方的に命令するだけで雑談なんてしなかった。

 世話されるのが当然だと思ってたし、修ちゃんも距離を取りつつ世話をするのが当然だと思っていた。

 それは姫と奴隷の関係。

 今考えればいびつな関係だ。

 そんな関係なんて破滅に直行するようなものだ。

 だけど私は、一周目の私はその異常性に気づいていなかった。

 二周目の方が人間関係はうまくいっている。

 ……ような気がする。

 私は二周目ではなるべく彼を尊重しようと努めている。

 スキンシップ以外では。

 そのせいか修ちゃんの方も最近では昔のように接してくれるようになった。

 やっぱり今の私は正しい!

 確信を得た私はくすりと笑うと本題に入ることにした。


「で、沙羅ちゃんについてなにかわかった?」


「仲間さんは三年F組。成績は普通。そして評判ですが……こんなことお嬢様に言うのはためらわれるのですが……」


 修ちゃんはもごもごしている。

 原因はわかっている。


「妊娠してお腹が大きくなっているんでしょ。それで隠せなくなった。焦った教師陣が近いうちに退学を決定する」


「……ええ。まあ……よくご存じで」


 沙羅ちゃんは私のキャバ嬢時代の友達だ。

 一時期ルームメイトだったこともある。

 いや……正確には居候でした。

 子どもを産んだせいで家から追い出されて私と同じように年齢をごまかしてキャバクラで働いていた。

 レールを外れて高校を中退した私たちへの世間の風当たりは結構キツい。

 就職先を探すのも寝床を探すのも結構難しいのだ。

 そりゃ年齢ごまかすくらいはする。

 変わり者の私は沙羅ちゃんにフォローしてもらいっぱなしだった。

 同じ高校をドロップアウトした私に沙羅ちゃんは同情したのだろう。

 私はまだバカだった頃に子どもを抱えて生きていく沙羅ちゃんを「不器用な生き方だなあ」と密かに思っていた。

 でも今ならわかる。

 一番バカなのは私だ。

 子どもができたくらいで罰しようとする世間の方がよほど邪悪なのに考えもせずそいつらに迎合した。

 私は自分が上等な人間だとは思っていない。

 甘やかされて育ったせいで性格が悪く、頭も悪く、そして驚くほど視野が狭い。

 スーパーの半額シールが大好きで数多い趣味の一つが執事へのセクハラというダメ人間だ。

 だけど私は筋が通らないのは嫌いだ。

 沙羅ちゃんはもっと幸せになってもいい人間だ。

 それに比べたらゲームのシナリオなどゴミ以下の価値しかない。

 知るかボケ!


「相手の男は?」


 私は修ちゃんに質問する。

 今回のターゲットだ。

 肋骨の数本は覚悟してもらおうと思う。


白瀬乃恵瑠(しらせのえる)。近所の摩郷島(まごうじま)工業の生徒ですね」


「あー、あの偏差値が地球環境に優しい感じで低く抑えられている」


「今日も汚嬢様は嫌味が冴え渡っていますね」


 嫌味が冴えているのは修ちゃんの方だと思う。

 確か摩郷島工業は市内でも最底辺の学校だ。

 ヤンキーとヤンキーとヤンキーしかいない学校だ。

 なぜヤンキーは一カ所に固まるのだろう?


「いえまあ……お嬢様のおっしゃるとおり、いわゆる教育困難校です。白瀬はそこでも評判の悪い生徒のようです」


「ふーん……」


「それと問題が……」


「問題? なに?」


「仲間沙羅さんのご尊父は武藤マテリアルの関西支社長です」


「へーうちの系列なんだ」


 八つ当たりでクソ親父の毛生え薬の中身虫さされの薬に変えておこう。

 同窓会に出たらみんなはげててショックだったらしい。

 まだはげてねえのに焦ってヘアケアに余念がない。


「それと白瀬乃恵瑠の実家も武藤財閥の取引……下請けの会社です」


 なるほど。

 全体像が見えてきた。

 さすがに家が関係していたのはびっくりした。

 やはり虫さされ薬の刑だ。

 密かに塗っている水虫の薬の中身も変えてやろう。

 だが救うための手が見えてきた。

 これは武藤家の方を巻き込んでどうにかしなければならない問題なのだ。


「なるほどね」


 私は決心した。

 沙羅ちゃんを救う方法はいくつか考えていた。

 だが一人では難しい。

 仲間が必要だ。

 と、言っても私の人望では進んで手を貸してくれるような人はいないだろう。

 ただ一人を除いては。


「あのさ……修ちゃん」


「なんですか?」


「手を貸して」


「いいですよ」


「すいぶん安請け合いするんだね」


「ええ。お嬢様のことですから計画があるんでしょう?」


「うん。もし白瀬乃恵瑠に責任を取らせつつ実家使って事態を丸く収めるって言ったら、手を貸すのをやめる?」


「まさか。お嬢様の行く道であればならどこまでもついていきます」


 やはり修ちゃんは頼りになる。

 私はにんまりといい笑顔になった。

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