理由と出会い
前回のあらすじ
学校入学したけど魔法使えない
なんと言われたのかを30秒程、頭の中で咀嚼する。
・・・。
「すみませんもう一度いって貰っていいデスカ?」
動揺のあまり語尾がおかしくなったが、そんな事は頭から抜け落ちていると言わんばかりで聞き直す。
「あーなんというか、お前の魔力を魔力石で測ろうと思ったのだが、魔力石が一切光らなかった。」
意味はわかるな?と暗に問いかけるように先生は繰り返した。
「つまり、内包魔力が無いと言うことですよね?」
「そうだ」
きっぱりと肯定され、一瞬だが何も言えない空気が流れる。
先生が言っていることは、つまり魔法の使えない凡人だと言うことを肯定する言葉だ。
だが、ファルは再考する。
僕の眼の強膜は青い。
つまり人よりも魔力総量が多く、生まれつきの青と言えば今後この国の騎士となり働くことの出来る所謂勝ち組である事の証明である。
それをこの目の前の石を持つ私の担任は"否定"したことになるのだ。
故に、もう一度質問をし直した。
「私の眼の色は何色でしょうか?」
「お前の眼の色は虹彩、強膜ともに青だ。」
やはり、青だったのだ。
間違いなく青。
見紛うことの無い青。
強いて言うならば空色と言うのだろうか
ライトブルーの奥に澄んだ青。
「言いたい事はわかる。私も何故魔力が無いのかわからないのだ。」
「じゃあ、測り直しましょうよ!」
語尾が自然と強くなる。
いくら眼が将来有望でも、魔力が無いのでは魔法など使えるはずが無い。
焦り、学校をやめなければなら無いのではないか?
もしかすると、普通ではありえない僕の眼の研究のために王都に連れて行かれるかもしれない。
頭の中は既にパニックだ。
頭のストッパーを失った心の内から止めどなく溢れる気持ちはとどまることを知らない。
だが、それに対して先生の返答は
「測りなおす必要はない、一度測るために触れた石はリセットしなければなら無い。わかるな?」
「・・・はい、一度対象の魔力を取り込むと対象以外の魔力を受け付けなくなり、近づくことで既に反応が始まるためです。」
「おしいな、正確には魔力情報だ。触れた者の情報と同じ魔力に反応して光る。」
「そしてお前が触ってから先生が今触れたが、一切光らなかった。」
「つまり、僕の情報が既に登録されているということですか?」
「その通りだ、何度も言うが測りなおす必要はない。」
握り拳に汗が滲みいる。
言い返したい気持ちが鉄砲水のように流れ込んでくるが、ファルは言い返すことが出来なかった。
詰まる所、思い当たる節が多過ぎたのだ。
自分以外の人たちの言う魔力のイメージ、それが一切わからないこと。
魔法器具を触っても反応がないこと。
魔法の発動が今の今まで一度もないこと。
そして、魔力石が光らなかったのだ。
心の中で否定する言葉と肯定する言葉がせめぎ合い、まるで、嵐にあった小舟のように翻弄される気持ち。
その葛藤のなか不意に先生が口を開いた。
「そこまで思いつめた顔をするな。お前の眼は入学当初から私たちも注目していたのだ。」
「ファル、お前をすぐに退学になどしたりなどはしない。というか俺がさせん!」
「お前は俺のクラスの生徒だからな!はっはっは!」
先生は快活に笑って場の凍り付きそうな空気を和ませたかったのだろう。
「先生、ありがとうございます・・!」
そして、先生の思惑通り場の空気は少し暖かいものになった。
「とりあえず、今日は実践には来なくていいぞ、特別な先生と授業を用意しておいたからな」
「特別とは?」
「我がマール国立の誇る校長直々の授業だよ」
にっこりという顔の似合わない先生のいかつい顔が歪む、これが微笑みというのならば人を殺せそうである。
そして、特別講師が校長と告げられたファルはというと。
「・・・・え?」
まさに鳩が豆鉄砲をくらったかのような顔であった。
校長の待つ特別実習室という教室に向かいながらファルは考えていた。
生まれてからこれまでを思い出す。
僕が生まれたときは村がとても盛り上がったらしい、蒼眼の子だ!と。
入れ替わり入れ替わり村の人達が僕を見に来ていた。
物心がつく頃には、自分も周りの眼を見比べながら自分と同じ子を探していたことがあった。
その時、普通の白黒以外にも緑や青の色を人の眼に見ていたことを思い出し、ふと引っかかった。
実は、眼の色は魔力を通して見ることで色がわかるのだが、魔力が無いと色を見ることが出来ないのだ。
そして気が付いた。
あれ、魔力がないはずなのに、なんで僕は周りの眼を見れていたのかな?
昔は魔力があった?
というか、普通は意識をしないと見れない魔力視が常に発動してるんだ?
ファルは考えを巡らせるが頭には一向に答えが浮かんでくる気配がない。
ついに考えることをやめ、結局、今から合う特別講師(校長)の事を考えることにしたのだが、
今から合う人は先生いわく眼の研究の「いちにんしゃ」とか言ってたけどどういう意味なんだろう?
というか、僕の眼っておかしいのかなやっぱり・・・
と浮かんでくる考えは疑問とネガティブな感情だけであった。
言われた通り特別実習室に到着したのは考えがまとまる事なく、これからどうなるのかという疑問が出た直後だった。
そして、なぜだろうか・・・
ドアの前に立ってからというもの悪寒が止まらない。
この先にいるのはほんとに校長なのだろうか、魔物な気がしてたまらないと身震いするファルであった。
開けたくないなぁ・・・
少し重みの感じるドアに手をかけながら思う。
自分の為とはいえ、体が警笛を鳴らしているドアを開けたくないのだ。
だが、自分の現状を確かめるためならば何でもするべきな事は分かりきっている。
すーっと意外に軽かったドアを少しずつ開けていく。
中は普通の実践室や教室とは少し違っていた。
表現するなら、そう理科室といった感じだ。
大きめの机が6つ、椅子がそれぞれ4つずつ置かれている。
ドアは黒板の横についており、教室の前から入る形になっていた。
机の周りに人影はない。
あれ?、この教室で待ってるって聞いたのにな・・・
周りを見ても人はいな・・
ふと自分の右にある教壇の方を見た時だった。
「わぁぁぁぁぁっっ!!?」
急に何かのシルエットが見えて、後ろに跳びのきながら悲鳴をあげてしまった。
「そんなビックリしないでよー!、傷つくよー?」
そして、すぐに場に似合わない少し年齢のいった女性の間の抜けた声が聞こえた。
声のした方へ目線を上げると"同年代くらいの"可愛い女の子が立っていた。
あまりの声と年齢のギャップを感じずにはいられず
「え?、え?」
と驚いて言葉が出てこなかった。
「そう驚かないで!私、何歳にみえる?」
と、続けざまに変な質問を投げかけてくるものだから
もう何が何だかわからずに質問に答えた。
「同い年くらい・・・」
「ふむふむ、私の普通の姿が見えてるって事ね」
声からすると4、50くらいの年齢にしか聞こえないファルには嘘をついてるようにしか見えないのだが、ここは突っ込むところではないとスルーする。
「君、疑ったでしょう?」
・・・顔には出ていたらしい。
「声が、あの・・・」
一瞬怪訝な顔になった後、あぁ!と納得した顔になり
ニヤニヤ笑いだした。
「ごめんごめん!声をいつものままにしてたままだったわ」
という声はとても若々しく、先程とは全く違う声になっていた。
頭の上にはてなマークを乗せすぎたファルはその重さに耐えきれずうな垂れた。
何なんだ一体・・・
見事なまでに嫌な予感が的中しているが、怯える程強いわけではない。
入る前の悪寒は何だったのか。
「改めて、私が校長のラフィール・フォン・ブリンだ!親しみを込めてブリンと呼んでいいよ!」
ふと声に気付いて頭を上げ直す。
金髪に白い肌、不敵につり上がった唇、整った顔立ち
一言で表すなら美少女である。
だが、眼は赤く燃えるような揺らめきを持ち、炎の羽をはためかせたような紋様が見えていた。
眼から圧倒的な威圧感を感じ、気後れしながらもその内容に耳を疑う。
この小さな女の子が校長だと言うのだから。
ペースはこんな感じで投稿出来たらいいなぁと…w
拙い文章だけどがんばるぞい!