放課後の教室
今までありがとうございました。
次作の予定はまだありませんが少しでも楽しんでいただける方がいれば、と思います。
あれから1年間、俺は毎日放課後教室に残った。
栗川がそこにいてくれる事を望みながら、勉強を続けてたので、地元の青葉大学に推薦で合格。彼女のいない学校は退屈で色褪せたものだった。
元々ぼっちだった俺は、栗川がいなくなったことで元の状態に戻っただけであると思っていたが、彼女のいない日常はどうしても受け入れられなかった。
そして、気がつけばもう卒業式になっていた。
長々と話すだけの時間を適当に眠って過ごし、卒業写真を友達と撮ることもなく、卒業アルバムの最後のページも白紙のままの俺は、もう何もないはずなのにどこか帰りにくい空気に流されるまま昼過ぎまで適当に椅子に座って暇を潰していた。
そんな空気も時が経つにつれ薄まって、適当な頃合いを見計らって校門を潜ったその時、1通の電話が届いた。
俺に電話をかけてくる相手なんて、家族と幼なじみを除くと1人しかいない。
名前を確認するまでもなかった。
「もしもし?」
「教室で待ってるから。」
急いで引き返し、いつものクラスの教室…ではなく、彼女と出会った一年前の教室に足を運んだ。
第一声はなかった。
ただ互いが互いを抱擁し、歓喜に震えた。
頬を伝う涙が、抱きしめられている彼女の存在感が、ここが現実であることをしっかりと認識させてくれた。
「久しぶり、氷山。」
「あぁ、久しぶり、栗川。」
それから、色々な話をした。
栗川は昨日ここに帰ってきたらしい。
わざわざ俺が受験するであろう青葉大学をわざわざ受験し、ここで一人暮らし出来るよう父に頼みこんでこの辺りで一人暮らしをするそうだ。
大変じゃないのか、と思ったが彼女の姉が近くに住んでいて、サポートしてくれると言っていたので大丈夫だろう。
その後、この思い出が詰まった教室で、俺は栗川にこう言った。
「もう一度俺と付き合ってくれますか?」
嬉しそうな彼女の微笑みが、俺の高校生活最後のページに記された。
その後のエピソードは皆さんのご想像にお任せします。




