ある殺し屋の一仕事
登場人物はほとんど名前は付いてません。
異世界や主人公がチートなどの要素もありません。
ストーリーはほぼ無しのようなものです。
昼下がりにオフィスビルの自動ドアを開けたのは1人のスーツ姿の男だった。見た感じでは何処にでもいそうなサラリーマンである。身長は日本人の平均と同じくらいである。おおよそここの社員ではないのだろう、彼は受付嬢の元に歩きより
「本日アポイントメントはないのですが、急ぎなので社長に会わせていただきたい。」
と申し出た。勿論アポイントメントのない訪問者を通すわけにはいかないのだろう、受付嬢は
「申し訳ありませんが、アポイントメントのない方はお通しする事ができません。本日はお引き取りください」
と男を一蹴した。
しかし彼は不適な微笑を浮かべ
「いいや、君は僕を通すはずです。こうすればね」
と言い切ると同時にジャケットから拳銃を取り出して彼女に突きつけてセーフィテイバーを外した。その拳銃はサイレンサーのついたベレッタm92fであった。彼の身体が死角になり入口の警備員には拳銃が認められなかったためこの男が危険な人物であるとは彼女以外の人間は気が付かなかった。このような状況下で銃の種類だとか、何故そのような物を突きつけられるのかなどすでに彼女の思考にはなく殺されるという恐怖からエレベーターを一階のこのフロアに呼び寄せるのがやっとであった。
彼は拳銃を下ろし
「ご理解ありがとうございます」
とその行動とは反比例したかのような優しい声色でつぶやき身体を横に向け受付を通ろうとした。その時彼女は一瞬正気を取り戻しこの男に気がつかれないように警備員に危険を知らせるボタンを押そうとした。しかし男はそれを見逃さず、すぐに彼女の方へ身体を向き直し彼女の頭部に2発の銃弾を叩き込んだ。だが一瞬間に合わなかったのか絶命した彼女の手はボタンを押していた。近くにいた警備員は異常事態に気づき危険人物を排除しようと背後から彼に近づいた。
「やれやれ、困ったものです」
彼はそう言うと一瞬にして振り返り警備員の頭部に2発の銃弾を撃ちその活動を停止させた。その時エレベーターが一階に到着した。
中からは警備員とは風体の違うスーツを着た男が2人出てきた。彼らは侵入者の存在を知らされ降りてきたのだろう2人とも腰のホルダーから拳銃を取り出し男に発砲した。しかし彼は柱の後ろにまわりそれを避けた。そして銃撃が止まった瞬間頭を覗かせ一瞬のうちに2人の頭部にもまた2発ずつ交互に銃弾を浴びせた。グリップから弾倉を落としジャケットの内側から予備の弾倉を取り出しそれを拳銃に装填しエレベーターに乗り込み最上階のボタンを押した。
エレベーターが最上階に着き扉が開いた瞬間大量の弾幕がその中に注ぎ込まれた。暫くして撃ちこみ終わったあと短機関銃を持ったスーツの男が
「これだけ撃ちこみゃさすがに死んでんだろ。中を調べろ」
と呟いた。
手下の男は頷いてエレベーターの中を見た。
しかしそこにあったのは蜂の巣になった侵入者ではなくて先ほど殺された男の1人だった。そしてもう一つのエレベーターから本来彼らが銃弾を浴びせるべきその男が出てきた。弾を撃ち尽くした彼らは不意をつかれ一瞬固まった。侵入者の男はその隙をついて彼らに一本のペンを投げ込んだ。ペンはピッ…ピッ‥っと電子音を鳴らし、その間隔が狭くなっていった。ピーと電子音の間隔が無くなった瞬間ペンは小さく爆発しエレベーターを調べていた1人以外の全員は吹っ飛んだ。
「綺麗でしょう?これ。僕のお気に入りなんです」
と囁きながらペンを左手回しながら右手の拳銃でその残った1人もすぐ様に今までと同じように射殺された。
かろうじて意識を繋ぎ止めた人間もいたが無情にも彼の銃弾が頭を貫いた。
拳銃をリロードしながら社長室までの長い廊下を渡り歩いているとサイドにある部屋の1室から大柄の男がドアを蹴破り出てきてその勢いのまま彼に襲いかかった。後ろを取られ首を絞められる体勢になった。彼は冷静に右腕で大男の脇腹に肘鉄を喰らわせて一瞬よろけたうちに首絞めを解き身体の重心を低くして背負い投げをした。大男を床に打ち付けた後、頭部に拳銃を向けたがすぐ様に振り払われて彼は素手になった。大男は立ち上がり間合いを取りファイティングポーズを示した。彼もそれに応じて両拳を肩ほどの高さまでに挙げた。
先に仕掛けたのは大男、右脚で脇腹に向けて蹴りを入れてきた。彼はそれを両手で受け止めて右の肘で相手の胸を打ち更に左手で大男の顎を打った。大男はよろけて後ろ向きになったがその勢いを使い左脚で回し蹴りを放った。しかし左手でそれを払い大男がこちらに顔向けた瞬間渾身の右ストレートを相手の顎に入れ倒した。脳を揺さぶられて大男はその見た目に反して情けなく生まれたての子鹿のように両脚を震わせ立っているのがやっとであった。その隙に彼は拳銃を拾い上げ零距離で大男の顳顬に向けて2発銃弾を放った。
近接戦の中で崩れたジャケットっとネクタイを直してまた社長室へ歩み始めた。
社長室の扉を開けた瞬間社長と思しき人物が彼に向けて弾切れになるまで発砲した。銃弾は全弾確実に彼の胴体に直撃した。しかし彼は倒れなかった。
「実はこのスーツ特注品でとても丈夫なんです。残念ですがあなたのその小銃ではこれを撃ち抜くことはできません」
と微笑みながら言った。
社長と思われる男は
「お前誰だ?何が目的だ?誰に雇われた?」
と激昂しながら叫んだ。
「僕は単なる殺し屋です。目的はあなたを殺すこと。誰に雇われたかは言いません。いや言えませんという方が妥当でしょう。クライアントについては僕は一切情報を聞かされてないのですから」
彼は丁寧に答えた。
「お前誰に喧嘩売ってるのか分かっているのか?俺はな…」
「関東暴力団連合の極芯會所属、秋元組、組長堂山登龍」
社長、もとい暴力団組長が言い終わるまえに彼がかぶせるようにして答えた。
「知っていて、お前。どういうことかわかっ」
また言い終える前に、今度は答えずに彼は堂山を射殺した。
「分かりませんね、僕はただクライアントの依頼に沿ってあなたを殺したにすぎない。おっと喋りすぎてしまいましたね。死んでしまった人間に何を言っても伝わりませんね。失敬」
仕事を終えてから堂山の屍に向かい冷たい声色で彼はそう言った。
彼の携帯電話が鳴りバイブレーションした
電話を取ると彼は
「任務完了です。」と告げ
電話先からは
「通報された。あと10分ほどで警察がそちら向かうはずだ。証拠を隠滅してその場から離れろ」
と返事が返ってきた。
「承知しました。」
とまた彼が返事をして電話を切った。
彼は裏口からビルを出て少し離れた路上裏で首元にナイフを立て皮膚を剥がした。
厳密に言えば人面マスクを外した。
その顔立ちはとても大人には見えない幼いものであった。マスクをライターで溶かしそれを排水溝に流し彼は去っていった。
後日この事件はニュースとなり暴力団の抗争という形で決着が着いた。防犯カメラに映っていた犯人である1人の男は対立関係の暴力団の下っ端の構成員であったが警察が逮捕する前に何者かによって殺されていた。この事件をきっかけに秋元組は解散、関わっていた暴力団が拳銃の違法所持で一斉検挙された。
何処かで携帯電話が鳴った。
「仕事を頼みたい」
「承知しました」
何処かでセーフィテイバーの外れた音が聞こえた。
読んで下さりありがとうございます。
読みにくい文章であったと思います。お疲れ様でした。