出発進行中
アップできるうちにしてしまおうという安直なアレ
「「「「「「アハハハハハハハハハ!!!」」」」」」
「HAHAHA、優勝。優勝ね、こりゃいい冗談だぜ!」
「まったくだな!」
「まぁ、最後まで聞かんか。知っておる通り毎年王都で行われる大会でな。世界中の魔道士たちが集い、戦う。いわゆる力比べみたいなもんじゃな。それでまぁ、さくっと優勝してきてもらいたいわけなんじゃが。」
さらりと言ってのけるアルフ。しかしそんな無茶振りをされたセナたちはたまったものではない。
「そもそもなんで出なくちゃいけないんだよ?」
「そうね、全く意味が解らないんだけど、ちゃんと教えてよ」
真っ先に突っかかるレンとアスカ。どうやら高齢者への労りとか敬意とかは全くないらしい。
「じゃから最後まで話を聞いてくれんかのう?」
「おう、さっさと俺らにそんな無茶言ってる理由を言えよ」
「理由なんざ、単純じゃ。そんなものこの建物を見ればわかるじゃろう。」
「は?」
「じゃから、このコミュニティーは金がない。なぜなら依頼がないからじゃ。ではなぜ依頼がないと思う?」
「人気がないからじゃねぇのか」
レンが開けるたびに軋む扉やら古くなった家具を見ながらそっけなく言う。
なまじ歴史だけはあるコミュニティーのため、建物はだいぶ老朽化が進んでいたりする。
「そう、その通りじゃ。ブレイヴハーツはまったく人気がない。まぁ、こんな街外れに居を構えているのじゃから仕方ないといえば仕方ないのじゃがこのように建物の修理すら満足にできない有様。何より問題なのがメンバーが皆毎日暇してることじゃ!少しは働け!」
「おいジーサン、そいつは俺らに当たられても困るんだけどな。依頼がないんだから働けるかっての」
「そうじゃ、じゃからブレイヴハーツトップの実力を持ってるお主らにちょっくら目立ってきてもらって依頼を増やそうっていうわけじゃ」
「まぁ、話は大体わかったけど。実際僕たちが優勝できる可能性ってどれくらいあるわけ?」
今まで黙って話を聞いていたリュウが口を開く。
「無謀な挑戦なら、やめたほうが良いと思う」
普段からあまりしゃべらないスタルも同意する。彼らはブレイヴハーツ内では実力者とはいえ、コミュニティー内での話だ。加えてイルネリアのより外への興味がほとんどないため、現在どんな魔道士たちが活躍しているのか全く知らない。
そんな彼らにアルフは
「まぁ、0.01%くらいかの?トップコミュニティーも参戦するような大会じゃしな」
「そんだけ!?そんな数字で挑戦させようとしてんのアンタは!?私たちを殺す気か?」
「まぁ、落ち着け。試合じゃから死ぬようなことはない。スポーツ感覚、というやつじゃな」
「で、だれが参戦するんだよ?」
少し納得したような調子でセナが質問する。
「先ほども言った通りウチの実力者である、セナ、レン、マナ、スタルの4人じゃな。リュウとアスカはわしと共に観戦、と言った感じじゃ。」
「え?じゃあ、私達は王都観光できるってわけね。行くわ。」
「やったね!ただで王都まで観光旅行だよ、アスカ!ちょうど王都でしか手に入らないようなものも欲しかったところだし僕も行くよ」
「即決かよ!俺らの意見とかは聞かない方向な訳?」
「じゃああんたたちは行かないの?」
「「「「まぁ、行くけど」」」」
4人の声が重なる。結局は皆自分の実力を試してみたいし、なんだかんだ言って仲良しなのだ。誰一人として認めないが。
そんな彼らを見て満足そうにアルフがうなずく。
「そう言ってくれると思ったぞ、それでは各自準備するように」
「ん?そもそも、魔道闘技大会っていつ開催なんだ?」
おや、と首を傾げるアルフ。そしてさも当然のようにこう言った。
「来週じゃが?」
「「「「「「それを早く言えクソジジィ!!!」」」」」」
――――――
地方都市であるイルネリアから王都までは馬車で5日はかかる。つまり1週間後に開催される大会に出場するためにはその日中に出発することが求められるわけだが・・・
「わしが言っといてあれなんじゃが、約2時間前に出発だ、と言われてすぐ準備できてしまうあたりがこのコミュニティーの暇さ加減を表しているようで絶望的じゃのう・・・」
先ほども言ったがこのコミュニティー、依頼がないのでフットワークが超軽いのだ。
「The sooner, the betterだぜ、ジーサン!さっさと行こう!(レン)」
「そうよー、王都まで5日もかかるんだからさっさとしないと観光できないかもしれないじゃないの!(アスカ)」
「おい静かにしろ、俺はさっきたたき起こされた分の睡眠時間を取り返したいんだ(セナ)」
「・・・(スタル、本を読んでいる)」
「zzz・・・(マナ、既に寝ている、実に無防備)」
「ま、まぁ皆、落ち着いてよ。これから出発なんだからさ(リュウ)」
最近は依頼がないためイルネリアの外にほとんど出たことのないため、実は6人ともテンションが上がっている。そんな状態で5日間の旅が始まったわけで・・・。
――――――
道中、宿にて
「うぉーいあすかぁ、お前も飲めよおー!(マナ)」
「ちょ、マナ!?あんた酔い過ぎ!ていうかあたしはまだ未成年よ!(アスカ)」
「おーい次持って来てくれ!まだまだ足りねぇーっ!(レン)」
「おいレン、それ俺のだって言っただろ!おい!(セナ)」
「もう、食べれない・・・みんな頼み過ぎ・・・(リュウ)」
「・・・(スタル、無言で自分の分を食す)」
「う、うぇっぷ・・・(アルフ、一日中運転したため吐きそう)」
――――――
道中、車内
「おいレンテメェ今イカサマしただろ見えてんだよ!(セナ)」
「あぁ?The proof of the pudding is in the eating!!証拠を見せろ!証拠をよぉ!!(レン)」
「ふ、二人ともやめなよ、落ち着いてゲームしようよ(リュウ)」
「それでその時セナのバカがさぁ、あたしのことを・・・って聞いてる?(アスカ、キレ気味)」
「あーん?あぁ、そぉゆーときはぁてきとーにぃ・・・(マナ)」
「・・・(スタル、相変わらず無言)」
「はぁ・・・腰が痛い(アルフ、運転中)」
――――――
「さて、もうすぐ王都じゃが・・・。おーい、お主ら!そろそろ到着するぞ!・・・ぞ?」
5日間ぶっ続けで移動し、その間ふざけ続けたせいか疲れてうとうとしているメンバー。
アルフは微笑むと、ゆっくりと馬車を王都の城門前で止める。王都、と言うだけあってなかなかに荘厳。黒曜石と鉄で出来た頑丈な扉とその両脇に立つ大理石の騎士と魔道士の像がモノクロのコントラストを生み出していて美しい。扉には所々宝石も埋め込んである。恐らくは何らかの魔力を込めたバリアのような役割を果たしているのだろう。城門から続く城壁の上に等間隔で設置された監視塔には立派な鎧を着た兵士が立っており、いかにも難攻不落、と言った様相を呈していた。
「おいお主ら、起きるんじゃ。着いたぞ」
そう声をかけると6人は起き始める。
「ようやく着いたのかよ、退屈過ぎて寝てたわ」
「目覚めて第一声がそれかの、まったく・・・」
飽きれたように言うアルフだったが6人はまったく気に留めない。
ぞろぞろと馬車の外に出て背伸びしたりしている。そんな中セナはひとり呟く。
「さーて、どんな魔道士がいるのかね・・・楽しみだ」
感想などよろしくお願いします。