とあるエージェントの独白
またしても新作です。時間がないとか言ってる割にやり過ぎだろと自分でも思います。
しかし今回は一人で書いているわけではありません。
友人のWnkMR2000さんからストーリー原案をいただき、二人で話を作っていく、という形になります。
更新頻度は相変わらずですが、今後ともよろしくお願いします!
その男は、何の変哲もないカフェで私を待っていた。
ある日突然、私に届いたメールに書いてあったその場所で、男はコーヒーを飲みながら待っていた。
どうして私がそこへ行こうと思ったのかわからない、だが長年の経験が私の足をそのカフェへと向かわせたのだ。
「待ってましたよ。」
その男、二十歳くらいだろうか、まだ若々しい声で私に声をかけた。
「どうぞ座って、何を飲みますか?」
私はアイスコーヒーを、というと丁度、通りかかった店員を呼び止め、アイスコーヒーを一つ、と注文した。
私はなぜ呼び出されたのかを男に問いただそうとすると、彼は手を上げ、私を制した。
「ええ、あなたが何を言いたいのかはわかります、しかし一つ約束していただきたい。」
私は少し考え、どのようなことかと尋ねた。
「私の話を最後まで、何一つ邪魔を入れず、聞いていただきたいのです。もちろん会話を録音したり、メモを取っても良いのですが、お願いします。話を最後まで聞いて、それでから質問をしてください。」
そういう風なオーダーをするクライアントや取材相手にはなんども会ったことがある。私は店員の持ってきたコーヒーを飲み、彼の申し出を了承した。私が了承すると、彼は安堵したような表情を見せ、自分のコーヒーを一口飲み、遠い記憶から何かを思い出すかのように目を閉じ、こう言った。
「あなたはバトラーを知っていますか?イギリスの詩人です。バトラーはこんな言葉を残しています。『どんな馬鹿でも真実を語ることはできるが、うまく嘘をつくことは、かなり頭の働く人間でなければできない。』私はかつてこの言葉をとても身近に感じたことがあります。」
そういうと男は静かに今までかけていた黒メガネをはずした。その下から現れた端整な顔に、年に不釣り合いな深い思案と疲労を刻みながら男は続けた。
「あなたは知る由もないだろうが、かつて、ブレイヴハーツという名の、魔道を扱うコミュニティがありました。ああ、あなたには魔道がなにかもわからないでしょうが、この世界では実証する手立てもない。超能力のようなものだと思ってください。私がいた『あの世界』ではあなたたちの理解の及ばないような事がいくつも起きていたのです。」
いきなりの事で私は驚き、そしてあきれを隠せなかった。しかし、男の目に宿る光は真剣そのもので、私はその目に圧倒され、言葉を飲み込んでしまった。
「これから私が話すのは、そんな異質な世界でも特に数奇な運命を背負うこととなってしまったとある少年と少女の話です。大切な人を失くし、目標無く、ただただ目の前の事を片付け、嘘をつき続けてきた少年と、持ち過ぎた力を他人のために使おうとする少女。そんな彼らの物語です。」
そこで男は一息つき、コーヒーを一口飲んだ。一瞬だけ、落ち着いた弁護士か、官僚のような見た目には似合わない、少年のような獰猛な笑みを浮かべた。私に向き直った時にはその顔からは笑みを掻き消し、再び話を続けた。
「一番最初から始めましょう。まだこの世界が均衡を保っていた頃。少年も少女も純粋で。日常を謳歌していた頃。まだ、神の逆鱗に触れてしまう前の話。
そんな平和で、にぎやかな話から。彼らの話を始めましょう。」
そうして男は語り出した。彼の、彼らの物語を。
さて、いかがでしたでしょうか。
まだまだプロローグ段階ですが、もしよろしければ評価、感想などお願いします!
それではまた~。